太陽光発電を導入する際は、再生可能エネルギーを固定買取価格で売電できるFIT制度(改正FIT法)について確認しておくと良いでしょう。
また、既に、FIT制度による売電契約をし収入を得ている方は、卒FIT後の運用についても気になるところですね。
そこで、本記事では、太陽光発電のFIT制度(改正FIT法)と新しく創立された「FIP制度」について解説していきます。
FIT法とは何か?わかりやすく解説
FIT法とは「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」の略称で、 ドイツ(1991年)やスペイン(1992年)ではすでに導入されており、日本では、2017年(平成29年)4月に改正され「FIT制度」としてスタートしています.
「FIT制度」は、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が固定価格で買い取るしくみで、再生可能エネルギーの普及を広めることをを目指して設立されています。
電力会社が買い取る費用の一部は、電気を利用する消費者から「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(再エネ賦課金)として徴収されることになります。
太陽光発電を導入する際は、導入後の費用対効果を高めるために、FIT制度のしくみにそって売電収益を得る方法があります。
- 売電:太陽光発電の発電量で余った電力を電力会社に買い取ってもらうことができます。太陽光発電の売電については、経済産業省の管轄により定められた「固定価格買取制度」(FIT制度)に基づいて利用することができます。
太陽光発電で売電することで、電気自給率を上げる効果や、早く初期費用を回収できるメリット等があります。
FIT制度(改正FIT法)が導入された背景
日本はエネルギー自給率が低く、主なエネルギー源である石油、石炭、天然ガスの調達は、輸入に頼っています。日本のエネルギー自給率は、わずか7.4%で約93%ものエネルギーを海外から輸入しています。
しかし、これらの資源調達は、世界情勢などによって大きく影響するため、安定した電力の供給を得るためには、再生可能エネルギーで発電した電力の普及が必要となっています。
再生可能エネルギーは、二酸化炭素の排出量が少なく、資源が枯渇せずに永続的に利用できるというメリットがあり、政府は「脱炭素化 」に向け2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」の実現も目標として掲げています。
FIT法の読み方とFIT制度の概要
FIT制度「固定価格買取制度」とは、5つの再生可能エネルギー「太陽光発電」、「風力発電」「水力発電」「地熱発電」「バイオマス発電」から発電した電気を固定価格で電力会社が買い取る制度です。
固定価格買取制度を利用する場合は、経済産業省に「事業計画認定申請」を行い、手続きを進めることになります。
FIT制度はいつまで続くのか?
住宅用太陽光発電の売電契約は、固定価格での買取期間が10年間と定められているため、
例えば、2023年11月にスタートした固定価格買取制度の適用は、10年後の2033年11月以降に終了することになります。
この10年の売電期間を過ぎて、FIT制度の適用が終了することを「卒FIT」と言い、契約終了した卒FIT後は、継続して売電することも可能です。
ただし、買取価格が年々下落傾向にありますので、契約する際は売電の単価についてしっかり確認することをおすすめします。
売電価格は今後も下がり続けることが予想されていますので、できるだけ高い単価で売電できるためには、早めの太陽光発電設備導入を検討しましょう。
【固定買取価格の推移】
年 | 売電価格・10kW未満 |
2012 | 42円 |
2013 | 38円 |
2014 | 37円 |
2015 | 33円 |
2016 | 31円 |
2017 | 28円 |
2018 | 26円 |
2019 | 24円 |
2020 | 21円 |
2021 | 19円 |
2022 | 17円 |
2023 | 16円 |
卒FIT後の運用について
卒FIT後の余剰電力は、大きく分けて以下の3つの方法を選ぶことができます。
- 余剰電力を同じ電力会社で売電契約をする
- ほかの電力会社を変えて売電契約をする
- 発電した余剰電力を自家消費する
余剰電力を同じ電力会社で売電契約をする
余剰電力を捨てないで、卒FITも継続し同じ電力会社で売電をすることは可能です。
ただし、気を付けたいポイントは、今まで10年間売電していた買取価格よりも単価が安くなることです。固定価格買取制度の単価は年々下落傾向であるため、買取価格についてしっかり確認してから契約しましょう。
ほかの電力会社を変えて売電契約をする
卒FIT後は買取価格が下がるので、他の電力会社の買取価格と比較して高い単価のサービスに変更することも可能です。
電力会社によってプランや買取価格が異なるため、サービス提供エリアや契約条件を確認して検討すると良いでしょう。
2023年度時点の余剰電力の買取価格は、電力会社により、1kWhの発電につき8円〜11円までの幅で設定されています。
発電した余剰電力を自家消費する
太陽光発電の余剰電力を使って売電しない方法もあります。売電する以外に蓄電池や電気自動車、エコキュート等を利用して自家消費することが可能です。
太陽光発電のみでは、夜や悪天候時には発電量を得ることができないので、蓄電池と連携すれば余剰電力を賢く利用できるようになります。
電気自動車は、蓄電池の代わりに活用できます。家庭用蓄電池と比較すると電気自動車の場合は蓄電容量が大きくなるので、停電が長く続く場合などに有効利用できます。
FIT制度の問題点
FIT制度の設立は、再生可能エネルギーによる電力の普及を促進する目的でスタートしていますが、太陽光発電などの導入率が高まることによって、国民への負担等が増えてきている等が問題となっています。
では、FIT制度の問題点について確認しておきましょう。
- 固定買取価格が低下している
- 再エネ賦課金の国民への負担が増えている
- 2019年問題の影響がある
固定買取価格が低下している
太陽光発電の普及に伴い、買取価格が年々低下しています。また、太陽光発電の買取価格が下がった主な理由は、導入コストが安くなったことがあげられます。
買取価格の設定は、太陽光発電の初期費用や工事費や維持費などに合わせて考慮されていますが、年々、太陽光発電設備を安く購入できるようになってきており、市場の拡大によって買取価格が調整されるようになっています。
つまり、もともと買取価格は、初期費用を回収できるように設定されているので、初期費用が安くなれば買取価格が下がることになります。
再エネ賦課金の国民への負担が増えている
FIT制度において、売電する電気の買い取りに要した費用は、電気使用者から再エネ賦課金として賄われています。
再生可能エネルギーで発電された電気は、日々使う電気の一部として供給されているため、 再エネ賦課金は、毎月の電気料金とあわせて徴収され、全国一律の単価で調整されています。
- 毎月の電気会社への支払い額 = 電気料金 + 再エネ賦課金
- 再エネ賦課金 = 毎月の電気量(kwh) ×1.4円/kwh
※使用する電気量の多い事業所で、国の要件を満たせば再エネ賦課金は減免でれる
再エネ賦課金の単価は、買取価格等を踏まえて年間でどのくらい再生可能エネルギーが導入されるか推測して、毎年度、経済産業大臣が決定しています。
再エネ賦課金の単価の変動については、徴収がスタートした2012年は1kWhあたり0.22円、2022年までは年々上昇し、2023年になってからは1kWhあたり3.45円で、いったん低下の推移となっています。
2023年に低下した主な理由は、ロシアによるウクライナ侵略の影響によって急激な市場価格の高騰により、再エネ電気の販売収入が増加したことが挙げられています。
なお、環境省による再エネ賦課金の推移についての見解は、2030年頃までは値上がりは続くと予想されています。
【再エネ賦課金の単価の推移】
年 | 単価(円/kWh) | 前年差(円/kWh) | 変化率(%) |
2012 | 0.22 | ー | ー |
2013 | 0.35 | 0.13 | 0.591 |
2014 | 0.75 | 0.4 | 1.143 |
2015 | 1.58 | 0.83 | 1.107 |
2016 | 2.25 | 0.67 | 0.424 |
2017 | 2.64 | 0.39 | 0.173 |
2018 | 2.9 | 0.26 | 0.098 |
2019 | 2.95 | 0.05 | 0.017 |
2020 | 2.98 | 0.03 | 0.01 |
2021 | 3.36 | 0.38 | 0.128 |
2022 | 3.45 | 0.09 | 0.027 |
2023 | 1.4 | -2.05 | -59.40% |
2019年問題が影響している
2009年11月にスタートした固定価格買取制度(FIT制度)は、10年後の2019年11月以降、買い取り期間が満了した後、余剰電力の取り扱いをどうするか?という問題について利用者の間で情報が錯綜した経緯があります。
当時の売電価格が48円/kWhと高額であったため契約者が急増し、買い取り期間満了を迎える利用者が多かったこともあり、制度廃止の噂やその後の運用方法の方針について懸念が広がったということがありました。
つまり、太陽光発電の売電契約が満了となる10年後を過ぎたら、11年目からどのように運用したらよいか?という疑問点が、売電の廃止の噂に繋がったということがあります。
したがって、売電制度を正しく利用するためには、固定価格買取満了後、11年目以降の運用について今から準備しておくことが必要になるということです。
運用方法については、売電を継続する、または蓄電池を導入して自家消費型にシフトすることが挙げられます。
FIT制度とFIP制度の違い
今後、住宅用太陽光発電が、FIP制度の対象範囲に拡大される可能性もありますので、FIT制度と合わせて、違い等を確認しておきましょう。
2012年に「固定価格買取制度(FIT制度)」が導入されてから、再生可能エネルギーによる電力の普及が高まる一方、さまざまな問題も発生しています。
そこで、2020年 6月、再生可能エネルギーの電力市場へ統合を目指すための措置として、
新たに「FIP制度」が導入され、2022年4月から制度がスタートしています。
FIP制度は、FIT制度のように固定買取価格ではなく、再エネ発電事業者が売電した際に、売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする仕組みとなっています。
太陽光発電の発電量は、天候や設備機器の設置条件などから、常に安定した電気を作ることができないため、売電する場合の投資対効果が低くなる場合もあります。そこで、一定の補助額を上乗せすることで、太陽光発電の導入をさらに促進することを目指しています。
FIT制度とFIP制度の大きな違いはFIT制度の買取価格は市場の動向に関係なく一定ですが、FIP制度では、参照価格は市場の動きによって変動し、一定した収入が得られるのはプレミアム(補助額)になります。
したがって、FIP制度を利用する場合は、売電するタイミングや売り先を選ぶ必要があります。
また、FIP制度は電力の需要に応じて、売電価格が変動するため、需要が増加すると買取価格も高くなるというのが大きなポイントとなります。
FIP制度のしくみ
FIP制度によって定められた「基準価格(FIP価格)」から、市場取引などによって発電事業者が期待できる収入分「参照価格」を差し引いた額を「プレミアム(補助額)」として再エネ発電事業者に支払われることになります。
つまり、売電収入と上乗せされたプレミアムの合計が、再エネ発電事業者の収入となる計算になります。なお、プレミアムについては、参照価格の変動により1ヶ月ごとに更新されます。
※基準価格:FIP制度の基準価格(FIP価格)は、再生可能エネ ルギー電気の供給が効率的に実施される場合に、必要とされる費用等を基礎とし、その他さまざまな状況を踏まえた上で最初に設定される価格 です。
※参照価格:売電した場合に期待できる「平均の売電収入」です。
卸電力市場価格に連動した価格+非化石価値取引市場の価格に連動した価格-バランシングコスト= 参照価格
FIP制度のメリット
FIP制度の発電事業者にとって、プレミアムが付与されるため、再エネに投資するインセンティブが確保されるメリットがあります。
卸電力市場や非化石価値取引市場の価格が下落しても、プレミアムが付与されるので、一定の収益を見込むことが可能です。また市場価格が高い場合は、蓄電池を併用するなどで供給量を増やせる効果があります。
FIT制度では契約時の固定価格で売電収入が決まりますが、FIP制度の場合は、市場の電力需要とニーズに応じて売電できるメリットがあります。ただし、逆に、市場変動によって売電価格も変動するので、市場の状況によっては売電価格が低くなることもあります。
まとめ
FIT制度は、再生可能エネルギーの普及のために導入された仕組みです。太陽光発電を導入で売電する際は、FIT制度とFIP 制度について知っておくと良いでしょう。
また卒FIT後の運用については、蓄電池を導入して自家消費する方法についても検討しておきましょう。