太陽光発電で元が取れるか考察~条件や期間について~

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太陽光発電は電気代の節約や売電で収入が得られるなど経済的メリットが期待できるシステムですが、ではいったい?いつ元が取れるのか?疑問をお持ちの方も多いでしょう。

住宅用太陽光発電の場合、元が取れるまでの期間は導入からおよそ10年前後と言われています。できるだけ早く導入費用を回収するためには、設置費用を抑えて発電量を増やし、自宅で消費できることが大切です。

では、そのためには具体的にどうしたら良いのか?太陽光発電で元が取れるための方法の条件や期間について解説していきます。

太陽光発電の仕組みと元が取れるための条件

太陽光発電で元が取れるためには、導入前に必要条件を揃えておくことが重要ですが、その前に、太陽光発電の仕組みについて知り、条件の必要性について確認しておきましょう。

太陽光発電の仕組みについて

太陽光発電は、資源に尽きることのない再生可能なエネルギーを利用したシステムで、発電するときに二酸化炭素・CO2を排出しないことで、地球にやさしい暮らしができるようになります。

太陽光発電システムを導入する場合は、住宅の屋根の上に太陽光を受けて発電できる環境を揃えることが第一条件です。

太陽光発電の仕組みは、太陽光のエネルギーを使って電気を作る発電方法で「太陽電池」で構成された「太陽光パネル」を使って電気を作ります。

この「太陽光パネル」に太陽光が当たると、光電効果が起こって電気の流れが生じる仕組みになっています。

太陽光発電システムを構築するためには、「太陽光パネル」の他に「パワーコンディショナー」やその他周辺機器を設置することが必要となり各種設備の性能や価格、導入後の維持管理などが、元を取れるかどうかに大きく影響してくるポイントとなります。

太陽光発電で元が取れるための条件について

では、具体的に、太陽光発電で元が取れるために必要な条件について解説していきます。

※元を取れるための条件
・太陽光発電の初期費用を抑える
・太陽光発電の発電効率を高める
・売電価格の高い時期に設置する
・定期的にメンテナンスを行う
・元が取れる期間をシュミレーションする

太陽光発電の初期費用を抑える

太陽光発電を導入する際は、基本的には元が取れるような仕組みになっています。

売電収入が得られるFIT制度の買取価格は年々下落傾向ですが、太陽光発電の初期費用も安くなっているため、住宅用太陽光発電を設置してから10年後には初期費用が回収できるような状況になっています。

したがって、できるだけ早く元を取るためには、まずは、設置費用の安い施工業者を探して初期費用を抑えることが必要です。逆に、相場より高い業者と契約してしまうと、初期費用の回収期間を長引かせる要因となってしまいます。

施工会社の選定については、複数社より見積もりを取って比較検討し、最適な業者を選ぶことが大切です。

業者選びで気を付けたい点は、安さだけを重視せずに施工技術や実績等も含めて総合的に判断することをおすすめします。価格に捕らわれたばかりに施工不良でリスクを負わないように気を付けましょう。

太陽光発電の発電効率を高める

太陽光発電システムを選ぶ際は、発電効率(変換効率)の高い太陽光パネルを設置することが重要です。基本的には、変換効率が高い太陽光パネルほど、性能が高いということになります。

変換効率を比較する目安は、およそ20%前後が一般的です。

発電効率が高ければ発電量が増えて電気代の節約にも繋がり、元が取れる期間も短縮されます。

また、現在、日本で流通している太陽パネルの主流は、結晶シリコン系で、その中でも「単結晶」タイプは高い発電効率がある製品です。単結晶シリコンの製品は、発電効率が高く人気商品であるため、値引き率が高くなる場合もありコスパが良くおすすめです。

売電価格の高い時期に設置する

住宅用太陽光発電10kW未満のシステムの場合、発電して余った電力はできるだけ売電に回せば、元を取れる期間を短縮して初期費用回収に繋げることができます。

ただし、太陽光発電の売電価格は毎年変動しているため、元が取れるかについては売電契約する時期によって状況が変わってきます。

2023年度の太陽光発電の売電価格については、容量別に以下の通りとなっています。
10kW未満の場合:16円/kWh
・10kW以上50kW未満の場合:10円/kWh
・50kW以上の場合:9.5円/kWh

経済産業省によりますと売電価格の動向については、2030年度までにこの買取価格を7円/kWhとすることを目指しているため、今後もさらに引き下げられることが想定できます。
したがって、なるべく単価の高い時期に設置した方がお得です。

定期的にメンテナンスを行う

太陽光発電の初期費用回収の期間10年前後とした場合、太陽光パネルの寿命がだいたい30年程度となっていますので、長く使用することができれば元を取れる計算になります。

そこで、10年間で元を取れるようにするためには、太陽光発電システムの定期的な点検や掃除、メンテナンスが必要となります。

住宅用の太陽光発電10kW未満の場合、メンテナンス義務化が法律で定められています。

メンテナンスを行うメリットは、目視点検定期点検によって異常が見つかった際に、すばやく対応できることや自然災害に備えることができることです。

また、メンテナンスを義務付けることで、常に最適な状況を確保することができるため、発電効果を低下させることなく売電収入を増やす効果や電気代の節約にも繋がっていきます。

元が取れる期間をシュミレーションする

太陽光発電で元が取れるか期間については、設置費用や設置時期、毎日の発電量、維持管理の仕方によって異なってきます。
したがって、初期費用回収を見込むためにも導入前にしっかりシュミレーションしておくことが重要となります。

回収期間のシュミレーションをする際は、以下の計算式になります。             ※初期費用 ÷(売電収入と自家発電による光熱費の削減額の合計額-維持費) =回収期間

ただし、算出した回収期間は、太陽光パネルの種類や設置する方角や日照条件などによって変わってきます。

また売電収入については、固定買取制度で契約する時期によって買取価格が異なりますので、導入する時期についてしっかり検討すると良いでしょう。

発電量が増えると元が取れるまでの期間が短くなる

太陽光発電の発電量は、元を取れるまでの期間に大きく関係してきます。太陽光発電で初期費用の回収期間に関わるポイントとして、発電量ついて確認しておくと良いでしょう。

発電量と元が取れる期間の関係

太陽光発電による経済的なメリットを期待しても、最適な発電量を得ることができなければ、電気代の節約や売電収入にあてる余剰電力を得ることも難しくなります。

太陽光発電の発電量をできるだけ増やして最適な状態を維持することができれば、費用対効果を高め、元を取れる期間を短縮することができるようになります。

太陽光パネルの発電量を増やすための方法

では、太陽光発電で発電量を増やす方法についてポイントを解説していきます。

※発電量を増やす方法
・太陽光パネルの設置場所の選定を考える
・年間温度や地域性を確認する
・パワコンの設置で発電量の安定化させる
・太陽光パネルの清掃とメンテナンスを行う
・メーカー保証を確認する

太陽光パネルの設置場所の選定を考える

太陽光パネルの発電量は、設置する屋根の状況によって変わってきます。

パネルを設置する角度や方角、周辺の障害物などは、設置する前に確認して日陰にならない最適な位置を選定することが必要です。

年間気温や地域性を確認する

太陽光発電の発電量は、太陽光の当たる場所、時間帯、天候条件など設置条件によって変動します。
おおよその発電量の目安は計算式によって出すことはできますが、太陽光発電システムは天候によって影響を受けるため、季節による年間温度、地域性(積雪地域、台風の多い地域など)等を考慮して検討することが必要です。

パワコンの設置で発電量を安定化させる

発電量を高めるためには、太陽光パネル以外にパワーコンディショナーの設置が必要となります。

パワーコンディショナーは、発電した電気を家庭で使える電気に変換するための機器で、太陽光発電パネルと一緒に利用してはじめて発電効果を発揮する設備です。

太陽光パネルの清掃とメンテナンスを行う

太陽光パネルに汚れがつくと発電量の低下に繋がります。

日常的な点検によって故障が見つかる場合もありますので、目で見える範囲で点検する習慣があると良いでしょう。太陽光発電の定期メンテナンスは4年に1回が推奨されています。

メーカー保証を確認する

メンテナンスの計画と一緒に、製品メーカーの保証制度についても確認しておくと良いでしょう。

保証期間内であれば故障や交換を無償で対応してもらえることも可能です。

保証制度を利用して長く運用することができれば、初期費用の回収も早めることが可能になります。

元が取れるまでの期間を短縮するための方法

太陽光発電で元を取れるまでの期間を短くするためには、発電量を増やすことに加えて、以下のポイントを確認することをおすすめします。

・固定価格買取制度の活用
・太陽光パネルの発電容量
・補助金制度の利用

固定価格買取制度の活用

固定価格買取制度は、太陽光発電の余剰電力を電力会社が固定価格で買い取ってくれる仕組みです。

制度によって決められた売電価格で契約した場合、住宅用の太陽光発電10kW未満の設備を対象に買取期間10年間、固定価格で利用することができます。

自宅で消費できなかった余剰電力は売電収入になるので、発電量をできるだけ増やして節電を心がけるようにしましょう。売電収入を増やすことは、初期費用の回収期間を短くする方法のひとつです。

太陽光パネルの発電容量

太陽光発電で元を取る期間を短くするには、発電量を増やすために太陽光パネルの容量についてチェックするようにしましょう。

発電容量は、太陽光発電システムがどれだけ発電できるかを表すための数値で、容量が大きいほどたくさん発電できることになります。

発電容量の大きさは、システムの収益におおきく影響するため、導入する際は、適切な発電容量の設備を選ぶことが必要です。

予算やご自宅の屋根の広さや設置条件、ライフスタイルなどに合わせて適切な容量の設備を選ぶようにしましょう。一般住宅用としては発電容量3〜5kWくらいが目安となります。

補助金制度の利用

太陽光発電の初期費用を抑える方法として、自治体より公募している補助金制度の利用がおすすめです。居住している自治体のHPを閲覧して情報をチェックすると良いでしょう。

元が取れるかどうか不安な場合は、補助金制度をうまく利用して、初期費用回収の期間をできるだけ短くすることを検討しましょう。

なお、補助金制度の申請方法などに疑問をお持ちの方は、太陽光発電を導入する前に施工店と相談して補助金制度の利用についてサポートしてもらうことをおすすめします。

メンテナンス費用と元が取れるまでの期間

太陽光発電で元が取れるためには、適切な設備の維持管理が必要です。太陽光発電は長く利用してメリットのあるシステムなので、導入後は定期的にメンテナンスを行うようにしましょう。
では、具体的にメンテナンスにはどれくらい費用がかかるのか?解説していきます。

太陽光発電のメンテナンス費用について

住宅用太陽光発電の容量を5KWとした場合、1回当たりの定期点検の費用相場は、約 2.9万円程度となっています。パワーコンディショナーについては、例えば20年間で一度に交換した場合に約22.4 万円程度が費用相場となります。
以上の数値から、1kW あたりの年間の維持費に換算すると 3,690 円となります。
2.9万円 × 5回(定期点検)+ 22.4万円 ÷ 5KW ÷ 20年 =3,690 円/kW/年
(※資源エネルギー庁2022年2月に公表したデータより)

太陽光発電のメンテナンス費用の内訳については、定期点検、メンテナンス費用、故障・修理代、清掃費用、廃棄・撤去費用、保険料などがあります。

なお、メーカー保証が付与されている10年〜15年間は、無償の対象期間となるためメンテナンス費用がかからない場合が多くなります。メーカー保証が充実している機器を選べば、維持管理費を抑えることができるようになります。

蓄電池の導入による元の取り方と効果

蓄電池を併用すると太陽光発電で元を取る期間を早める効果があります。蓄電池を設置した場合、元を取るためには、どのようなメリット・デメリットがあるのか?確認しておきましょう。

蓄電池の導入効果

蓄電池を導入した場合、以下のような効果があります。ただし、普段の電気使用量と蓄電池の容量が合わなかった場合や、適切なメンテナンスを行わないで故障の原因となった場合には、デメリットになってしまうケースもあります。

蓄電池は、太陽光発電と相性によい機器なので、使い方や設置条件によって導入効果や経済的メリットを得ることができます。

※蓄電池の導入効果
・災害や停電時に使える
・電気料金が節約できる
・電気代高騰の影響を受けない
・ピークシフトに貢献できる
・電気自動車と連携できる
・FIT制度の終了後に自家消費できる
・天候に左右されなくなる
・環境にやさしい生活ができる
・パワコン一体型蓄電池が利用できる

蓄電池で元を取るためのメリット

蓄電池の併用で元を取るためのメリットは、以下の2つのポイントがあげられます。

・余剰電力を利用して天候の悪い日に使える
・安い深夜電力プランで利用できる

余剰電力を利用して天候の悪い日に使える

太陽光発電の余剰電力を蓄電池へ充電することで、夜間や雨天曇りの日でも自由に電気を使うことができます。

蓄電池の併用で余剰電力をできるだけ増やすことができれば、電力会社から高い電気代を払わずに済み、太陽光発電で元を取るための期間を短くして経済効果を上げることが可能になります。

安い深夜電力プランで利用できる

一般的に電力会社の深夜電力の単価は安く設定されているため、深夜電力を蓄電池に貯めて電気代の高い昼間に放電して使うとお得です。

深夜プランの設定時間は、電力会社によっても異なりますが、だいたい夜22〜朝7時の幅で安く利用することができます。

深夜の安い電力を蓄電池に充電して昼間に使いきれない余剰電力は売電収入にあてることも可能です。

蓄電池で元を取るためのデメリット

蓄電池のデメリットは、初期費用がかかることと、設置スペースを確保すること、蓄電容量に限りがあること等があります。

蓄電池はどんな家庭にもメリットがあるわけではありません。高額な蓄電池を購入しても効果が見込めない場合は導入について見直した方がよいでしょう。

また、蓄電池のサイズは、エアコンの室外機より一回り小さいくらいを目安に考えると良いでしょう。蓄電容量については、家庭内の電気消費量に合わせて、小さすぎず大きすぎない容量がベストです。

省エネ効果と元が取れるまでの期間の関係

太陽光発電は、深刻化するエネルギー資源問題の解決策として国が推進している取り組みのひとつです。
太陽光発電は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を排出しないため、従来の電力会社から購入する電気消費量を減らし省エネ効果をもたらすシステムです。

現在、利用している化石燃料による火力発電は、1kWhあたり約690gのCO2を排出していますが、太陽光発電を導入すれば、CO2排出量は1kWhあたり17〜48gと大幅に削減することができるようになります。

太陽光パネルの発電量と電気消費量のバランスをうまく運用して自家消費型の生活ができれば、国が推進する省エネ対策に貢献ができ、さらに初期費用回収期間10年以内には元を取ることも見据えて運用することが可能です。

まとめ

住宅用太陽光発電の場合、元が取れるまでの期間は導入からおよそ10年前後と言われています。

元が取れるまでの期間をなるべく短くするためには、太陽光発電の発電量を増やすことはもちろん、蓄電池の設置や補助金制度の利用、適切なメンテナンスを行う等、必要な設置条件を揃えて利用することが必要です。

太陽光発電は長期計画で回収できるシステムであるため、最適な条件を見極めて運用していくことをおすすめします。