太陽光発電を導入する際に、屋根に負担がかからないのか、気になる方も多いでしょう。
太陽光パネルは、各メーカーの製品ごとに重さはさまざまです。住宅の耐震性や屋根の劣化状態に合わせて、適切な重さのパネルを準備することが必要です。
本記事では。太陽光発電を導入する際に知っておきたい、屋根への負担、建物への影響、屋根に負担がかからない太陽光パネルの選び方などを解説します。
太陽光パネルは屋根に負担がかかる?パネルの重さ
太陽光パネルの重さは、各メーカーごとでさまざまですが、平均して約15〜18㎏程度です。 例えば、太陽光パネルを20枚設置した場合の総重量は、300〜360㎏程度になります。
住宅用太陽光発電は、容量10KWまで設置することができるので、およそ500㎏以上の重さになるケースもあります。
では、「太陽光パネルの重さが屋根に負担がかかるのか」という疑問については、正しい知識と手順で対応すれば、特に心配する必要はありません。
太陽光パネルを屋根の上に設置する際は、パネルを横に敷き詰めるので一点に重さがかかることはありません。屋根にかかる荷重が分散するように施工を行います。
ただし、気をつけたい点は、地震が起きた場合や老朽化した建物の屋根に設置した場合は、太陽光パネルの重さでトラブルとなる可能性があります。
導入後にトラブルとならないように、事前に屋根の状態を点検をしてから施工を行って、地震に備えて耐震補強なども検討することをおすすめします。また、適切な設置業者に依頼することも大切です。
国土交通省の太陽光パネルの重さについての見解
太陽光パネルの重さについて安全性を確認するために、もう少し詳しく紹介します。
国土交通省は、太陽光発電システムの設置には構造安全性の確認が必要であると推奨しています。
以下は、「令和4年度 国土交通省補助事業・戸建住宅の太陽光発電システム設置に関するQ&A」」による太陽光パネルの重さに関する内容です。
太陽光発電システムの重量について
A:屋根に設置する太陽電池アレイの重量は、太陽電池モジュールメーカーによってサイズや重量が異なりますが、4kW システムの場合で約 3,900〜5,400N(約 400〜550 ㎏)程度の重量になります。概ね 100〜15ON/㎡(10〜15 ㎏/㎡)で、積雪換算で 5〜7cm 程度になります。
A:太陽電池アレイそのものの重量による荷重以外にも、風や積雪、地震などによる荷重にも耐える必要があります。
重い屋根と軽い屋根の荷重について
A:建築基準法では、屋根の仕様によって重い屋根、軽い屋根に分類しています。
屋根に太陽光発電システムを搭載する場合、様々な荷重を屋根荷重(重い屋根または軽い屋根)に加えて構造強度を検討し、安全性を確認することが必要です。
A:2階建て、延床面積約 120 ㎡の戸建住宅(屋根面積約 100 ㎡)に太陽光発電システムを搭載することを想定した場合の荷重増になる数値は以下の通りです。
重い屋根(瓦)の場合
- 屋根重量:490~590N/㎡✕100 ㎡=49000~59000 N
- 4kW の太陽光発電システム搭載(+約 3,900~5,400N)で ⇒約 8~9%の荷重増
- 種類:陶器瓦、セメント瓦
- 重量:陶器瓦の場合、瓦桟葺きで 490~590N/㎡(50~60 ㎏/㎡)
軽い屋根の場合
- 屋根重量:化粧スレート 180~21ON/㎡✕100 ㎡=18000~21000 N
- 金属板:50~60N/㎡✕100 ㎡=5000~6000 N
- アスファルトシングル材 90~120N/㎡ 100 ㎡=9000~12000N
- 4kW の太陽光発電システム搭載(+約 3,900~5,400N)で
⇒ 化粧スレート:約 20~26%の荷重増
⇒ 金属板 :約 78~90%の荷重増
⇒ アスファルトシングル:約43~45%の荷重増
- 種類:化粧スレート(コロニアル、カラーベスト)、金属系、アスファルトシングル
- 重量:化粧スレート 180~21ON/㎡(18~21 ㎏/㎡)金属板 50~60N/㎡(5~6 ㎏/㎡)、 アスファルトシングル材 90~120N/㎡(9~12 ㎏/㎡)
A:太陽光発電システムを設置する場合には、壁量計算において屋根荷重が大きくなることを考慮することや許容応力度計算(構造計算)等によって構造安全性を確認することが必要です。
構造安全性の確認のために必要なデータについては、設計者(建築士)が、以下のポイントを把握している必要があります。
- 太陽光パネル+架台の重量
- 太陽光パネルの留め付け方法
地震力や風圧力に抵抗するために必要な耐力壁の量(=壁量)が、建物に適切に配置されているかどうかを確認することが必要です。(壁量計算)
外力を受けて部材にかかる力が、部材の許容できる力におさまることができるか計算する必要があります。(許容応力度計算)
【太陽光発電】パネルの設置で耐震性への影響は?
太陽光発電の導入で家が壊れたり倒れるような影響については、太陽光パネルの重さを加えた 構造計算をしておくことで確認できます。
一般住宅の場合は、木造3階建、鉄骨造、鉄筋コンクリート造住宅は構造計算書が必要になります。
構造計算の費用相場は、建物にもよりますが、30坪前後の一般住宅で30万〜50万円程度になります。
また、太陽光発電を設置するタイミングが、新築時または後付け時では対応が変わってきます。
例えば、容量5kwの太陽光パネルの設置面積を約25㎡とした場合、15kg/㎡×25㎡=375kgの重さを追加して計算します。
耐震等級について
太陽光パネルを設置する場合、事前に知っておきたい耐震等級について解説します。
特に、後付けで太陽光パネルを設置する際は、耐震等級3相当の建物であると安全性を確保することができます。
- 耐震等級:建物を建てる際は、建築基準法で定められている耐震基準を満たす必要があります。耐震等級は、地震に耐えられる建物であるか耐震性について3つのランクに分けられています。耐震性のランクは、数字が大きい方が耐震性が高いと評価されます。
耐震等級3 > 耐震等級2 >耐震等級1
耐震等級1
- 数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強~7相当)に対して、倒壊・崩壊しない程度
- 数十年に一度程度生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)に対して、損傷を生じない程度
耐震等級2
- 数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強~7相当)の1.25倍の力に対して、倒壊・崩壊しない程度
- 数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)の1.25倍の力に対して、損傷を生じない程度
耐震等級3
- 数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強~7相当)の1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊しない程度
- 数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)の1.5倍の力に対して、損傷を生じない程度
太陽光パネルの重さを減らす方法
太陽光パネルは、構造計算上問題なければ、特に心配する必要はありませんが、後づけで設置する場合や、何か不安材料がある場合には、太陽光パネルの重さを減らすことを考えましょう。
太陽光パネルの重さを減らして屋根にかかる荷重を抑える方法については、以下のポイントがあげられます。
- 発電効率の高い太陽光パネルを設置する
- 軽量の太陽光パネルを設置する
発電効率の高い太陽光パネルを設置する
太陽光パネルの発電効率とは、太陽エネルギーをどのくらい電力に変換できるか計算した割合です。発電効率の高い太陽光パネルを設置すれば、たくさん電気を作ることができます。
一般的には、発電効率20%以上であれば高性能の太陽光パネルであると評価されます。
発電効率が高いパネルを設置すれば、パネルの数量が少なくても発電量を多く作ることができるため、屋根にかかる負担を減らすことができます。
軽量の太陽光パネルを設置する
軽量型モデルを提供している太陽光パネルメーカーもあります。
「フジプレアム」の太陽光パネル「希」は、パネル表面が薄型ガラスで加工されて、パネルの重さを9.5㎏以下に抑えて耐震性を考慮した製品です。
一般的な太陽光パネルの重さ15㎏では、既存の建物に設置できなかった場合にも、軽量の太陽光パネルを選ぶことで、屋根の荷重を減らすことができます。
太陽光パネルの重さ以外で気を付けたいポイント
太陽光パネルの重さ以外にも、気を付けたいポイントについても確認しておきましょう。
設置業者選び
太陽光パネルを設置する際は、建築基準法にしたがって建物の耐震性や屋根への負担を専門的にアドバイスしてくれる業者が必要です。
正式な審査基準を基に施工を行う優良な業者を選びましょう。
適切な業者を選ぶ基準は、以下の内容を確認しましょう。
- 施工実績が多いこと。
- 万が一の工事トラブルに備えて工事保険加入業者であること。
- 建築関連法規や消費者契約法の処罰実績のない優良業者であること。
- 電気工事士資格所有者が在籍していること。
- アフターフォローが充実していること。
耐震性以外の屋根条件で気を付けたいリスク
太陽光パネルは、屋根上に設置するため、重さ以外にも注意したいポイントがあります。
- 雨漏りリスク
- 自然災害のリスク
雨漏りリスク
太陽光パネルの工事では、屋根に穴を空けてパネルを固定するのが一般的です。 この穴をあける工程で正しく施工されない場合に、雨漏りが発生するという問題が発生します。
太陽光パネルを固定する場合は、あけた穴にコーキング剤やシーリング材と呼ばれる充填剤で 防水加工を行います。釘をうった穴をしっかり防水加工すれば、雨漏りの問題はほぼなくなります。
屋根の雨漏りリスクを解消するには、適切な施工業者を選ぶことが必要です。
太陽光発電の導入では、施工業者がコスト削減のために手抜き工事をして費用を安く提案してくることもあります。太陽光発電の見積りで必要以上に安く提案された場合は、質の悪い工事をされてしまう場合がありますので要注意です。
施工不良以外では、太陽光パネルを設置する以前に、屋根が老朽化していることで雨漏りの原因となるケースもあります。太陽光パネルを設置できる屋根は、築年数の古い屋根の場合は、そのまま工事をしてもシステムを活用する前に屋根の不具合で問題が起きます。
雨漏りを防ぐためには、工事前に現場調査のために屋根の点検を依頼して、屋根の状態を万全にしてから次の工程に進むことが必要です。
また、もしもに備えて太陽光発電メーカーによっては、雨漏り保証が付いている会社もあります。事前に確認することをおすすめします。
自然災害のリスク
太陽パネルは、台風、地震、積雪などの災害によって落下や破損の恐れがあります。
特に、台風が通過しやすい地域や積雪地域にお住まいの方は、念入りに太陽光パネルの施工について確認しましょう。
台風対策
太陽光パネルの耐風圧については、JIS(日本産業規格)の規定「JIS C 8990」により耐風圧荷重は2,400Pa、風速毎秒62メートルに耐える設計になっています。
この規定以上の風速になると、屋根上に設置してある太陽光パネルの状態は危険性を伴うことになります。
ただし、風速毎秒62メートルを超えなくても、強風によって飛来物がぶつかってきたり、太陽光パネルが飛んだりすることも可能性として考えておく必要はあります。
さらに、台風による影響が、太陽光発電設備の不良工事によって被害が大きくなってしまうケースもあります。
また、太陽光設備が災害によって被害を受けた場合、保険に加入していれば自己負担額が減るのでおすすめです。
- 企業総合保険:火災・落雷・風災・水災などの事故によって、太陽光発電設備が損害を受けた場合に補償されます。
- 施設賠償責任保険:自宅の太陽光発電が、他人や他人の物に損害を与えた場合に補償されます。
- 動産総合保険:自然災害などの損害を受けた場合に補償されます。
- 休業損害補償保険(売電収入補償特約):太陽光発電設備の故障で発電が停止して、売電収入がなくなった場合に補償されます。
積雪対策
積雪による被害を抑える方法としては、ソーラーパネルの角度を30度以上に傾けて設置すると、自然に積もった雪が落下するので雪対策に効果的です。
また、落雪によって隣家に雪が落下したり、屋根下の人に危害を与える等を防ぐために、雪止めの設置は必要です。雪止めとは、積雪地域でのトラブルを防止するための方法です。屋根からの落雪を防ぐために屋根上に部材を設置します。雪止めは、落雪による破損事故や人身事故、近隣トラブルを防ぐ効果があります。
積雪地域での太陽光パネルの設置は、雪の重みによるパネルの破損や架台の倒壊、屋根のゆがみなどのリスクを踏まえて、耐久性の高い設備を選ぶことをおすすめします。
また、万が一の倒壊に備えて損害保険でカバーすることも検討しましょう。雪による災害リスクに対応している保険については、保険会社によって変わりますが、動産総合保険または火災保険によって補償されることが一般的です。
まとめ
太陽光発電を導入する際は、建物の耐震性を考慮して、太陽光パネルの重さで屋根に負担がかかるかどうか確認しましょう。国土交通省の見解では、構造安全性の確認ができれば問題はないとされているため、各家庭の建物や屋根の条件に合わせて、適切な設置業者に相談してから工事を進めるようにしましょう。