太陽光発電は、非常用電源として災害時に役立つシステムです。
パワーコンディショナーの使い方を知っておくと、停電でも家電や携帯が使えるので安心です。
さらに、停電時には太陽光発電と蓄電池をセットで使うと電源確保が万全になり安心です。
本記事では、太陽光発電の非常用電源の使い方や、災害時に使えるメリットやデメリット、蓄電池との組み合わせについて解説します。
太陽光発電の非常用電源はどこにある?
災害時に役立つ太陽光発電ですが、突然の停電で慌てないように、非常用コンセントの位置と使い方を確認しておきましょう。
太陽光発電の非常用コンセント位置
非常用コンセントの位置については、屋内型パワーコンディショナーの場合は、パワーコンディショナ―本体の側面から確認できます。
一方、屋外型パワーコンディショナ―の場合は、パワーコンディショナーの位置とは別に 屋内や廊下の足もと,、屋外等いずれかに設置してあります。
非常用コンセントは、通常のコンセントと識別できるように赤や黒などに色分けされてわかりやすくなっています。
また、災害時に非常用コンセントがすぐ使えるように、周辺に物を置かずにスペースを設けておくと良いでしょう。
太陽光発電の 非常用コンセント(自立運転モード切り替え) 使い方
もし、災害時に停電になった場合は、パワーコンディショナーは通常モードでは稼働しないため「自立運転モード」に切り替えて利用します。
「自立運転モード」に切り替えると、災害時でも非常用コンセントに接続すると電気を使うことができます。
では、停電時の「自立運転モード」への切り替え手順について確認していきましょう。
- 通常の電源用コンセントとは別の、非常用コンセントの位置を確認します。
- 発火などによる火事や事故を防ぐために主電源のブレーカーを【OFF】にします。
- 太陽光発電用のブレーカーを【OFF】にします。太陽光発電システムのパワーコンディショナーと分電盤の間のブレーカーを切ります。
- 使用する家電等を非常用コンセントに接続して、運転モード切替スイッチを 【自立】にします。
- 【緑】ランプが点滅し、「自立運転中」のメッセージが表示されます。
- コンセントの表示ランプが点灯したら電気を使用できます。
停電が解消したら、「連系運転モード」への切り替えを行いましょう。
- 非常用コンセントからプラグを抜いて運転モード切替スイッチを【OFF】にします。
- 【緑】のランプが点滅しているのを確認します。
- 太陽光発電用ブレーカーを【ON】にします。
- 通常どおり電気を使うことができます。
太陽光発電の非常用電源でどれだけの電力を賄える?!
停電時に非常用電源で使える最大電力は、1,500Wまでです。
自立運転モードに切り替えて使える電力には制限があることを知っておきましょう。太陽光発電で停電時に 使えない家電もあります。
1,500Wの出力で使える家電については、以下の表を参考にして下さい。
携帯やパソコン、テレビ、冷蔵庫や洗濯機など消費電力の少ない家電は、1,500W以内であれば同時に使うこともできます。一方、消費電力の大きいIHクッキングヒーターやエアコン等は、同時に稼働することはできないため注意が必要です。
最大出力1,500Wに合わせて、一度に複数の家電を稼働させないようにしましょう。
家電の消費電力 | |||
家電 | 消費電力 | 家電 | 消費電力 |
IHクッキングヒーター | 1400-3000W | 掃除機 | 850-1000W |
エアコン | 300-3000W | テレビ | 300-500W |
電子レンジ | 500-1400W | 洗濯機 | 200-400W |
電気ポット | 900-1400W | 冷蔵庫 | 100-300W |
アイロン | 1200-1300W | 炊飯器 | 100-300W |
ドライヤー | 600-1200W | ノートPC | 50-150W |
食器洗い乾燥機 | 1,300W | 携帯の充電 | 5-15W |
災害時、太陽光発電にはどんな危険がある?
太陽光発電を使う際に、災害時に気を付けたい危険リスクについて確認しましょう。
太陽光発電設備は、災害等によって浸水・破損した場合でも発電を行う可能性があるため、破損箇所に触れると感電する危険性があります。
太陽光パネルは、破損している場合も、太陽光が当たれば300V以上の電気を発電します。 水没や浸水した太陽発電設備に、接近したり接触したりすると感電の恐れがあります。
もし、災害時に被害にあった場合は、自己処理せずに、管理者や事業者へ連絡して、適切な対応をしてもらうようにしましょう。
太陽光発電が災害による破損が生じた場合、対応については、以下のポイントに注意しましょう。
- 太陽光パネル、太陽光発電設備に接近、接触しない
- 近隣住民にも注意を呼びかけて、二次被害を避ける
- メーカー、施工業者へ連絡して対処を依頼する
なお、災害時の危険リスクを軽減するためには、普段から定期メンテナンスを行って、 架台のネジのゆるみがないか、太陽光パネルが破損していないかチェックすることが重要です。
太陽光発電、 災害時の危険リスクに備えて自然災害補償
自然災害補償は、、台風による太陽光パネルの落下や落雷による火事など、太陽光発電設備が自然災害によって被害を受けた場合に補償されるものです。各メーカーとも10年補償が一般的です。
ただし、太陽光発電設備で自然災害補償を受けられるメーカーは限られています。
もし、台風の多い地域や自然災害が心配な地域に設置する場合は、自然災害補償の有無について確認しておきましょう。また、自然災害補償については、保険に加入しておくことも可能です。
自然災害補償の損害対象は、メーカーによって異なりますが、主な内容をまとめておきます。
- 落雷
- 破裂または爆発
- 火災
- 水災(台風、暴風雨、豪雨による洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れなど)
- 風災(台風・暴風雨・豪雨など)
- ひょう災
- 雪災(豪雪・雪崩など)
- 落下(物体が建物外部から落ちた場合)
- 飛来
- 衝突または倒壊
【太陽光発電】災害時のメリット・デメリット
災害時に使える太陽光発電のメリットについて確認しましょう。
特に小さい子どもや高齢者のいる世帯では、太陽光発電を設置しておくと安心です。 非常用コンセントを利用して電気が使えるので、携帯を使って情報収集したり、家電を使って普段に近い生活ができるようになります。特に、真冬や真夏に停電になった場合、暑さ寒さで健康被害に合うこともありますので、
エアコンが稼働すれば部屋の温度管理も行き届いて、熱中症や風邪になるリスクも減ります。
では、災害時の太陽光発電のデメリットについて確認しましょう。
太陽光発電×蓄電池で停電時も安心
停電時に太陽光発電 を有効活用するには、蓄電池があると便利です。
蓄電池のメリットは、停電時の夜に電気が使えるので安心感にも繋がります。
蓄電池の容量については、大きい容量の蓄電池の方が、停電時でも電気を長時間賄うことができます。
- 停電時に対応できる蓄電池の容量は、目安として6.5kWh〜7kWhがおすすめです。6.5kWhの蓄電池であれば、およそ1日停電が続いても家電を使うことができます。
具体的には、ご家庭で停電時に使いたい出力に合わせて蓄電池の容量について検討しましょう。
停電時でも普段通りに生活したいのか?最低限の電源で賄う程度で良いのか?停電時の過ごし方を想定して「蓄電池」の容量を選ぶことをおすすめします。
蓄電池の容量の目安については、以下を参考にしてください。
※蓄電池の容量は、消費電力量×時間(kWh)で計算できます。
- 小型蓄電池:4kWh〜5kWh
- 中型蓄電池:7kWh程度
- 大型蓄電池:10kWh前後
また、停電時に蓄電池を有効活用するには、以下のポイントを確認しましょう。
- 100V・200Ⅴ対応の蓄電池がある
- 全量負荷・特定負荷の蓄電池がある
100V・200Ⅴ対応の蓄電池がある
200V機器に対応している「蓄電池」は、使える家電が多くなるので便利です。
200V機器対応の家電は、エアコン、エコキュート、IHクッキングヒーターなどです。100V機器対応の蓄電池では、これらの家電を稼働することは難しくなります。
蓄電池を選ぶ際は、使いたい家電に合わせて100Ⅴ対応、または200Ⅴ対応の出力を選びましょう。
また、夜は太陽光発電でエアコンを稼働することができませんが、蓄電池があれば、昼間に発電した電力を貯めておいて夜間に使えるようになります。
停電時でもエアコンを動かすためには、100Vのエアコンで、蓄電池との併用で検討すると良いでしょう。
全量負荷・特定負荷の蓄電池がある
蓄電池の負荷の種類「全負荷型」または「特定負荷型」のどちらを選ぶかによって、停電時の活用範囲が異なります。
全負荷型
全負荷型は、すべての負荷を賄える蓄電池です。
災害時に普段通り、家電や電気機器を利用できるので、容量が大きい分、便利で安心です。
全負荷型の蓄電池は、オール電化の家庭や、家族の人数が多かったり小さい子供やペットがいて普段の電気使用量が多めの世帯におすすめのタイプです。
特定負荷型
特定負荷型は、一部の負荷設備のみを賄うことができる蓄電池です。
災害時に利用できる家電や電気機器が少ないので、停電時でも利用範囲が限られます。
特定負荷型の蓄電池は、世帯人数が少ない家庭におすすめのタイプです。
災害に備えて蓄電池の導入に補助金制度を利用する
太陽光発電と蓄電池で災害時に備えるには、補助金制度を利用して初期費用の負担を減らす方法がおすすめです。
現在、東京都が公募している補助金制度について紹介します。
「令和5年度 家庭における蓄電池導入促進事業 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」
東京都は、家庭用の太陽光発電による電気の自家消費の増大と非常時のエネルギー自立性の向上を目的として、蓄電池システムの設置にかかる費用に対して助成を行っています。
- 予算額:496億円(令和5年度分)
- 受付期間:令和5年5月29日から令和10年3月31日(17時まで)
- 対象機種:(一社)環境共創イニシアチブに登録されている機器
- 対象者:蓄電池システムの所有者
- 申請条件
- 都内の住宅に新規に設置された助成対象機器であること。
- 令和5年4月1日から令和10年3月31日までの間に助成対象機器を設置すること。
- 蓄電池システムの機器費が蓄電容量1kWh当たり20万円以下であること。
- 国が令和3年度以降に実施する補助事業事業における補助対象機器として一般社団法人環境共創イニシアチブ「SII」により登録されているものであること。
- 対象機器について、都及び公社の他の同種の助成金を重複して受けていないこと。
- 助成対象者のうち、独立行政法人、地方独立行政法人並びに国及び地方公共団体の出資、出えん等の比率が50%を超える法人については、公社が求めた場合、住宅のエネルギー消費量削減に関する普及啓発を行い、当該普及啓発について報告すること。
補助金の上限額
- 太陽光発電システムが4kW以上の場合
以下のうちいずれか小さい額(※)
(a)蓄電容量(6.34kWh以上):15万円/kWh(100kWh未満)
(b)蓄電容量(6.34kWh未満):19万円/kWh(最大95万円)
(c)太陽光発電システムの発電出力:30万円/kW
(d)助成対象経費×3/4の額 - 太陽光発電システムが4kW未満か、太陽光発電システムの出力がわからない場合
以下のうちいずれか小さい額
(a)蓄電容量(6.34kWh以上):15万円/kWh(最大120万円)
(b)蓄電容量(6.34kWh未満):19万円/kWh(最大95万円)
(c)助成対象経費×3/4の額
災害以外にも役立つ蓄電池のメリット
太陽光発電の導入効果を最大限に活かすには、停電時でなくても蓄電池を設置しておいた方がおすすめです。
電気料金が節約できる
太陽光発電と蓄電池の併用、そして電気会社の割安深夜プランを契約すれば、電気代の節約に繋がります。
深夜プランで割安となった電気を蓄電池に貯めておいて、料金が高くなる昼間に使用すれば 電気代の節約になります。
電気代高騰の影響を受けない
電気代が年々値上がりして来ていますが、太陽光発電と蓄電池を利用すれば、値上がりの問題から回避することができるようになります。
蓄電池を設置して電力会社の電気をできるだけ減らすと、電気代の値上がり対策になります。 各家庭でできる節約方法として、太陽光発電と蓄電池の併用がおすすめです。
ピークシフトに貢献できる
蓄電池を設置して電気を使用する時間帯をシフトすれば、電力需要のピークを減らすことができて、しかも通常使っている電気量は変えずに電気料金を下げることが可能になります。
電気自動車と連携できる
「トライブリッド蓄電システム」を利用すると、電気自動車も自家消費で電気を賄うことができるようになります。
昼間に太陽光発電の電気を蓄電池に貯めておいて、夜間に電気自動車へ充電すれば、次の日には 電気自動車を利用することができるようになります。
FIT制度の終了後に自家消費できる
FIT(固定価格買取制度)が終了しても自家消費型にシフトして蓄電池で電気を賄うことができます。
売電収入よりも電力会社からの購入する電気を少なくしたほうが結果的には経済的メリットを得ることができます。
天候に左右されなくなる
蓄電池に電気を貯めておけるので、天候が悪い日でも太陽光発電の電気を使うことができます。
天気が悪い日が続いても蓄電池があれば、安心して太陽光発電をうまく利用することができます。
環境にやさしい生活ができる
太陽光発電で作った電気を蓄電池に貯めて利用すれば、電気の無駄遣いを避けて節電効果に繋がります。
再生可能なエネルギーを効果的に活用し地球温暖化などの環境問題対策に貢献することができます。
パワコン一体型蓄電池が利用できる
パワーコンディショナーと買い替えのタイミングに合わせて、パワコン一体型蓄電池( ハイブリッド型蓄電池)を導入すれば、変換効率が良く発電効果が期待できます。
一般的にパワーコンディショナーの寿命は10〜15年程度で、いずれは修理や交換が必要な時期が来ます。
太陽光発電を設置してから10年経過している場合や、蓄電池の導入を検討されている場合は、 パワコン一体型蓄電池で検討するのも良いでしょう。
まとめ
太陽光発電は、非常用電源として災害に備えることができるシステムです。停電時にすばやく対応できるように、前もって使い方を確認しておきましょう。
また、停電時に対応するためには蓄電池の併用が必須です。蓄電池があれば夜の電源も確保できるので安心です。
蓄電池は災害以外にも役立つので、必要な蓄電容量の機種を選んで有効活用しましょう。