太陽光発電は、売電せずに発電した電気を自家消費するだけでも電気代の節約になると言われています。
ただし、発電した電気を無駄なく消費するには蓄電池があった方が効率良く使うことができます。
本記事では、太陽光発電に蓄電池を併用する必要性とデメリット、費用面について解説します。
【太陽光発電】蓄電池の必要性
蓄電池は、太陽光パネルで発電した電気を蓄えておける設備です。
したがって、発電した電気を蓄えて、いつでも自由に効率よく使いたい場合は、蓄電池があった方が便利です。
一方、発電した電気を、その日のうちに消費する場合や普段の電気使用量が少ない家庭の場合は、蓄電池が無くても良いケースもあります。
太陽光発電システムは、日中に発電した電気を夜に使うことができないことや、停電時には稼働できないデメリットがあります。ただし、蓄電池を併用することで、これらのデメリットを解消することができます。
また、太陽光発電システムに不可欠な設備であるパワーコンディショナーは、稼働するために電圧 (50V〜100V程度)が必要なので、夜の光エネルギーでは電圧が足りないので電気を作ることは難しくなります。そこで、もし蓄電池があれば、パワーコンディショナーをフル稼働することも可能です。
さらに、一般家庭の電気利用時間を考えると、夜の20時頃がピークなので、電気をよく使う時間帯に蓄電池に蓄えた電気を利用できれば、電気代節約にも繋がります。
加えて、自然災害によって停電が続いた場合、蓄電池があると災害時のストレスも軽減し、安全対策にもなります。
したがって、太陽光発電と蓄電池の併用は、時間帯や天候、季節などが悪条件の時でも、また、停電時であっても、蓄えた電気を使いたい時に利用できるメリットがあります。
ただし、太陽光発電を導入する際に、発電した電気を売電して収入にしたい場合は、導入前に発電量と売電できる電力量についてバランスを計算することが必要です。一方、家庭内で使うだけの 自家消費型であれば、家庭の電気消費量に合う蓄電池の容量を考えてから設置するかどうか検討すると良いでしょう。
エネルギー価格が世界的に高騰していることを踏まえると、自家消費型で利用する場合も 電気代の値上がり対策として蓄電池があった方が効率良く電気を消費することができるようになります。
太陽光発電】家庭用蓄電池のデメリット
では、家庭用蓄電池を設置する前に知っておきたいデメリットを確認しておきましょう。
- 初期費用が高くなる
- メンテナンスが必要になる
- 設置スペースが必要になる
- 電気の貯められる容量の制限がある
- 電気代がすでに安い人はメリットはない
初期費用が高くなる
太陽光発電の導入費に蓄電池の費用もかかるため、その分、初期費用は高くなります。
太陽光発電システムにかかる初期費用の相場は以下の通りです。
- 太陽光発電の容量1kWあたり、平均26.1万円くらい
- 一般的に需要の多い容量「3〜5kW」で計算した場合、78.3万円〜130.5万円くらい
- 太陽光パネル:14.5万円
- パワーコンディショナー:4.2万円
- 架台:2.1万円
- 周辺機器:0.2万円
- 工事費 :7.1万円
- 蓄電池の本体価格は、容量「1kWhあたり」15万円〜21万円くらい
- 工事費の目安は。およそ20万円〜35万円くらい
初期費用を安くする方法としては、補助金制度の利用がおすすめです。国、または地方自治体の応募条件に合わせて申請ができます。
太陽光発電や蓄電池の普及に伴い、補助金制度の人気が高まっており、予算額を早めに超えるケースも多くなっています。その場合は、応募期間を早めに打ち切ってしまうため、もし補助金制度を利用したい方は、早めの手続きを行うと良いでしょう。
メンテナンスが必要になる
特に屋外型の蓄電池の場合は、雨風や粉塵で汚れやすくなるため、定期的にメンテナンスを行う必要があります。
また、蓄電池の使用回数や一定期間が経過したあとは、交換や修理が必要な時期も来ますので、随時対応するようにしましょう。
蓄電池の交換時期の目安は、使用開始から約10〜15年経過後、メーカーごとに異なりますが、充放電回数が約4,000回〜12,000回くらい使用頻度が過ぎると不具合が生じやすくなります。
なお、蓄電池の場合は、太陽光パネルのようにメンテナンスの義務化は決まっていませんが、定期的なメンテナンスは怠らず対応するようにしましょう。
蓄電池メーカーが行っている監視サービスを利用して、故障や不具合に早めに対応してもらうこともできます。
蓄電池の寿命は、およそ10年〜15年です。製品メーカーの保証期間が10年〜15年というものも多く、保証期間内に故障した場合は、無償で修理をしてもらうことも可能です。
ただし、保証期間を経過してからの交換は、有償となりますので、新しい蓄電池の購入費用と設置工事費、古い蓄電池の撤去処分費用などを準備しておく必要があります。
設置スペースが必要になる
蓄電池を設置する場合は、蓄電池の大きさや重さによって、設置スペースに納まらないケースもあります。
蓄電池は、屋外型と屋内型があり、屋外型は重量があり、屋内型は比較的コンパクトサイズで、設置面の耐久性によって簡易基礎などを施工してから設置するようになります。
- 家庭用蓄電池のサイズ目安:幅:約80cm/奥行:約40cm/高さ:約100cmくらい
- 屋外型の蓄電池は、目安として自転車1台を入れるくらいの経路があれば設置できる
- メンテナンスができるスペースも確保しておくことが必要になる
また、設置スペースの他に、設置条件も考慮する必要があります。換気が良く直射日光が当たらない場所で、できれば北面に置くと良いでしょう。
さらに、寒冷地域に設置する際は、低温度の環境では装置のトラブルになる場合もあります。 積雪地域の設置も、設置箇所の工夫が必要です。
電気の貯められる容量の制限がある
蓄電池の容量については、大容量であれば、電気を多く貯めておけるので使える時間も長くなります。容量が小さければ、貯めた電気量も少なく使える時間も短くなります。
ただし、大容量の蓄電池だからと言って、残量がなくなるまで使ってしまえば、必要なときに電気を自由に使うことはできなくなります。
蓄電池の容量は、単位kWh(キロワットアワー)で、容量には「定格容量」と「実効容量」の2種類があります。
- 定格容量:規定された条件において蓄えられる電気量
- 実効容量:実際に使用できる電気量
蓄電池の出力というのは、一度にどれくらいの電力量を出せるのかを示した数値です。出力が大きい蓄電池は、同時にたくさんの家電などを使うことができます。
例えば、出力の小さい蓄電池の場合は、停電時には限られた家電しか使えないということになります。
電気代がすでに安い人はメリットはない
すでに電気代が安くて、昼間に家にあまりいない人は、蓄電池を設置しても効果的に利用することはできないでしょう。蓄電池は高額なだけに、それなりの費用効果を期待できない場合は、よく考えて検討することをおすすめします。
まずは、普段の電気使用量を確認して、太陽光発電と蓄電池を導入するメリットとデメリットを比較して検討すると良いでしょう。
蓄電池は元が取れる?取れない?できるだけ元を取るコツ
蓄電池で元が取れるということは、蓄電池の初期費用が回収できるか否かということです。
蓄電池を設置してできるだけ元を取るコツについて以下のポイントを確認しましょう。
- 電気料金プランを見直す
- 卒FIT後は蓄電池を有効活用する
- 発電量を増やす
- 導入前に費用のシュミレーションをする
電気料金プランを見直す
深夜時間帯の電力量料金が安くなるプランに変更すると、電気料金削減効果につながります。
深夜プランは、日中外出していて仕事などで夜に帰宅することが多い家庭に向いている電気料金プランです。およそ深夜22~朝7時の間に料金が安く設定されています。
電力量料金の安い時間帯に蓄電池で充電して、電力使用量の多い時間帯に自家消費すれば電気代を減らす効果が上がります。
卒FIT後は蓄電池を有効活用する
卒FIT後は、固定買取単価より安い単価でしか電気を買い取ってもらえないため、契約満了後は、自家消費型にして発電できない夜間や非常時対策に活用方法を切り替えると、電気代節約に繋がります。
経産省(資源エネルギー庁)も蓄電池の導入を卒FIT後の選択肢として推奨しています。
発電量を増やす
太陽光発電の発電量を増やして、蓄電池に蓄えた電気を利用できれば、電気会社から購入する電気量はその分減ります。
発電量を増やす方法としては、まずは、発電効率の高い太陽パネルを選び、施工する際は太陽光の当たりやすい条件に設置して、設置後は、故障やトラブルが起こらないように定期メンテナンスを行うことが必要です。
発電して余った電気は蓄電池があれば蓄えておくことができます。発電量がたくさん得られる条件であれば、発電量に合わせて蓄電量の大きい機種を選ぶことも可能です。
導入前に費用のシュミレーションをする
太陽光発電に蓄電池を併用して設置する場合の、初期費用、メンテナンス費用、電気使用量と電気代などから、蓄電池を設置することでメリットがあるかどうか、シュミレーションすることをおすすめします。
シュミレーションについては、設置業者に相談して算出してもらうことも可能です。
【太陽光発電】気になる蓄電池後付けの価格
蓄電池の充電方式、蓄電容量。蓄電池の種類、蓄電池メーカーによって、価格が異なりますので、それぞれ確認してから導入しましょう。
なお、蓄電池の価格の内訳は、蓄電池の本体価格+工事費+諸経費になります。
蓄電池の充電方式によって価格が違う
単機能型とハイブリッド型を比べると、単機能型の方が価格が安くなります。
ハイブリッド型の蓄電池は、パワーコンディショナーを1台で兼用できる充電方式なので、
単機能型のように2台のパワーコンディショナーを設置する必要がありません。
また、設備機器がコンパクトに納まり管理しやすくなるメリットがあり、総合的な機能性から、ハイブリット型の方が、価格は高めに設定されています。
ただし、ハイブリット型の場合は、新たに導入する際は、既存のパワーコンディショナーを撤去する必要があります。
充電方式別の価格相場は以下の通りです。
- 単機能型蓄電池の価格相場:70万円〜265万円くらい
- ハイブリッド型の蓄電池の価格相場:100万円〜270万円くらい
蓄電容量によって価格が違う
蓄電池の容量は、大きいほど使える電気も多くなり使い勝手がよくなりますが、その分、価格も高額になります。
蓄電池の容量別、価格相場は以下の通りです。
- ※1kWhあたり、15〜21万円 (蓄電池+工事費込み)
- 容量4kWhの蓄電池:60~84万円くらい
- 容量5kWhの蓄電池:75〜105万円くらい
- 容量容量7kWhの蓄電池:105~147万くらい
- 容量10kWhの蓄電池:150~210万円くらい
蓄電池の種類によって価格相場が違う
一般家庭用でよく使われている蓄電池は「リチウムイオン」が主流で、価格は他の種類と比較すると高めです。「リチウムイオン」が高額なのは、原材料費や製造コストが高いからです。
蓄電池の種類別の価格相場は以下の通りです。
- リチウムイオン蓄電池:13~20万円/kWh
- 鉛蓄電池:5万円/kWh
- NAS蓄電池:4万円/kWh
- ニッケル水素:10万円/kWh
蓄電池メーカーによって価格相場は違う
蓄電池は、メーカーによって仕様と価格が異なります。
Panasonic(パナソニック)
- 容量:3.5kWh~12.6kWh
- 価格相場:90万~300万円(税込)
KYOCERA(京セラ)
- 容量:5kWh~15kWh
- 価格相場:120~250万円(税込)
SHARP(シャープ)
- 容量:4.2kWh~13kWh
- 価格相場:105万~260万円(税込)
OMRON(オムロン)
- 容量:4.2kWh~16.4kWh
- 価格相場:100~280万円(税込)
nichicon(ニチコン)
- 容量:2.0kWh~16.6kWh
- 価格相場:42万~270万円(税込)
長州産業
- 容量:6.5kWh~16.4kWh
- 価格相場:135~280万円(税込)
まとめ
太陽光発電に蓄電池を設置する際は、導入する家庭のライフスタイルによって必要か否かは変ってきます。
売電しないで自家消費型で利用する場合も、発電した電気を蓄えておけるメリットは大きいので、予算や状況に合せて検討されると良いでしょう。