固定価格買い取り制度については、太陽光発電を導入する場合に必ず知っておきたいルールとなります。
太陽光発電を長期的に利用する際は、固定買取制度のしくみを知り、売電収入で費用対効果を高める方法を検討しましょう。
本記事では、太陽光発電の「固定買取制度/FIT制度」について、概要と利用するメリットや注意点、卒FIT後の自家消費について解説していきます。
固定価格買い取り制度「FIT」とは
太陽光発電システムを導入する際は、「固定価格買取制度/FIT制度」を利用して費用対効果を高めることができます。
「固定価格買取制度/FIT制度」では、毎年、買取価格が更新されていますので、売電の計画に合わせてルール内容をしっかりチェックすることをおすすめします。
では、「固定価格買取制度/FIT制度」の概要と仕組みについて確認しておきましょう。
FIT制度とは
「固定価格買取制度/FIT制度」は、再生可能エネルギーの導入を促進することを目的として、2017年(平成29年)4月よりスタートしています。
制度内容は、発電容量の大きさによって「産業用」または「住宅用」に分類されています。
「固定価格買取制度/FIT制度」は、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る仕組みです。
家庭用太陽光発電10kW未満の場合は、買取期間10年間、同じ単価で売電することができます。 産業用では、出力10kW以上の設備が対象となり、投資目的などで運用するケースとなります。
なお、売電申請する場合は、経済産業省に「事業計画認定申請」を行い手続きを進めることになります。
また、太陽光発電の初期費用を回収するためには、FIT制度を利用して売電収入を得ることができれば、買取期間10年間で元が取ることも可能です。
なお、買取価格については、年々単価が低くなってきている傾向にあるため、契約時の買取価格をチェックして初期費用回収の目途を立てておくことをおすすめします。
FIT制度が導入された背景
日本はエネルギー自給率が低く、主なエネルギー源である石油、石炭、天然ガスの調達は輸入に頼っています。
また、日本のエネルギー自給率は、わずか7.4%で約93%ものエネルギーを海外から輸入しています。
しかし、これらの資源調達は、世界情勢などによって大きく影響するため、安定した電力の供給を得るためには、再生可能エネルギーで発電した電力の普及が必要となっています。
再生可能エネルギーは、二酸化炭素の排出量が少なく、資源が枯渇せずに永続的に利用できるというメリットがあり、政府は「脱炭素化 」に向け2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」の実現も目標として掲げています。
固定価格買取制度/FIT制度のメリットと注意点
「固定価格買取制度/FIT制度」を導入する際のメリットと注意点について確認していきましょう。
固定価格買取制度/FIT制度のメリット
- 初期費用回収に繋がる
- 電気自給率を上げる効果がある
- 地球にやさしい環境作りができる
初期費用回収に繋がる
住宅用太陽光発電10kW未満のシステムの場合、発電して余った電力はできるだけ売電に回せば、元を取れる期間を短縮して初期費用回収に繋げることができます。
ただし、太陽光発電の買取価格は毎年変動しているため、元が取れるかについては売電契約する時期によって状況が変わってきます。
初期費用の回収期間のシュミレーションについては、以下の計算式となります。
なお、算出した回収期間は、太陽光パネルの種類や設置する方角や季節や天候による日照量によって変わってきます。
電気自給率を上げる効果がある
日本のエネルギー自給率を上げることに貢献することができます。
国際情勢に左右されずに電力供給ができて、再生可能エネルギーを利用して国内で電力を生産すれば、輸入に頼らないシステムを築くことが可能になります。
地球にやさしい環境作りができる
地球温暖化の原因となる二酸化炭素CO2の影響を防ぐためには、一般家庭でも再生可能なエネルギ―を利用すれば、地球にやさしい環境づくりに貢献することができます。
太陽光発電は、燃料を使わないシステムなのでCO2を排出しない特徴があります。
固定価格買取制度/FIT制度を利用する際の注意点
- 固定買取価格は年々下がっている
- 買取期間が終了すると売電単価は下がる
- 再エネ賦課金の負担が増えている
固定買取価格は年々下がっている
太陽光発電の普及に伴い、買取価格が年々低下しています。また、太陽光発電の買取価格が下がった主な理由は、導入コストが安くなったことがあげられます。
買取価格の設定は、太陽光発電の初期費用や工事費や維持費などに合わせて考慮されていますが、年々、太陽光発電の設備機器が安く購入できるようになってきて、市場の拡大によって買取価格が調整されるようになっています。
つまり、もともと買取価格は、初期費用を回収できるように設定されているので、初期費用が安くなれば買取価格が下がることになります。
「固定価格買取制度/FIT制度」を利用する際は、契約時の買取価格について、経済産業省資源エネルギー庁が公表している売電価格の推移について確認しておきましょう。
2023年度の太陽光発電の買取価格については、容量別に以下の通りとなっています。
- 10kW未満の場合:16円/kWh
- 10kW以上50kW未満の場合:10円/kWh
- 50kW以上の場合:9.5円/kWh
経済産業省は、2030年度までにこの買取価格を7円/kWhとすることを目指しているため、今後もさらに引き下げられることが予測されています。
買取期間が終了すると売電単価は下がる
買取期間が終了した場合、継続して電力会社へ売電をすることも可能ですが、FIT 制度の買取価格は減額されることが大半です。
したがって、「固定価格買取制度/FIT制度」の契約終了後(卒FIT後)のタイミングで、家庭で使う電気について自家消費型に切り替えることをおすすめします。
自家消費型に切り替える場合は、太陽光発電に蓄電池を併用したり、電気会社の深夜割安プランに変更する等、太陽光発電の利用環境を見直すと良いでしょう。
買取期間終了後の11年目以降に自家消費型にすれば、固定買取制度のルールの変更や買取価格の変動に影響されず、太陽光パネルで発電した電気を全て家庭内で賄うことで電気料金の節約にも繋がっていきます。
「固定価格買取制度/FIT制度」を利用する場合は、10年後の運用についても考えておくことをおすすめします。
再エネ賦課金の負担が増えている
「固定価格買取制度/FIT制度」において、売電する電気の買い取りに使った費用は、電気使用者から再エネ賦課金として賄われています。
再生可能エネルギーで発電された電気は、日々使う電気の一部として供給されているため、 再エネ賦課金は、毎月の電気料金とあわせて徴収され、全国一律の単価で調整されています。
再エネ賦課金 = 毎月の電気量(kwh) ×1.4円/kwh
※使用する電気量の多い事業所で、国の要件を満たせば再エネ賦課金は減免されます。
再エネ賦課金の単価は、買取価格等を踏まえて年間でどのくらい再生可能エネルギーが導入されるか推測して、毎年度、経済産業大臣が決定しています。
再エネ賦課金の単価の変動については、徴収がスタートした2012年は1kWhあたり0.22円、2022年までは年々上昇し、2023年になってからは1kWhあたり3.45円で、いったん低下の推移となっています。
2023年に低下した主な理由は、ロシアによるウクライナ侵略の影響によって急激な市場価格の高騰により、再エネ電気の販売収入が増加したことが挙げられています。
なお、環境省による再エネ賦課金の推移についての見解は、2030年頃までは値上がりは続くと予想されています。
太陽光発電の固定買取制度はいつまで続くの?
住宅用太陽光発電の売電契約は、固定価格での買取期間が10年間と定められているため、
例えば、2023年11月にスタートした固定価格買取制度の適用は、10年後の2033年11月以降に終了することになります。
この10年の売電期間を過ぎて、FIT制度の適用が終了することを「卒FIT」と言い、契約終了した卒FIT後は、継続して売電することも可能です。
買取価格は今後も下がり続けることが予想されていますので、できるだけ高い単価で売電するためには、できれば早めに太陽光発電設備の導入を検討しましょう。
【最新】固定価格買取制度の価格の推移
では、経済産業省資源エネルギー庁が公表している売電価格の推移について最新の情報を確認しておきましょう。2012年には42円から2023年には16円に下がっています。
年 | 買取価格・10kW未満 |
2012 | 42円 |
2013 | 38円 |
2014 | 37円 |
2015 | 33円 |
2016 | 31円 |
2017 | 28円 |
2018 | 26円 |
2019 | 24円 |
2020 | 21円 |
2021 | 19円 |
2022 | 17円 |
2023 | 16円 |
経済産業省による2023年度(令和5年度)太陽光発電の売電価格は以下の通りです。
太陽光発電の種類 | 発電容量 | 売電価格 | 買取方法 | 買取期間 |
家庭用太陽光発電 | 10kW未満 | 16円/kWh | 全量買取/余剰買取 | 10年 |
産業用・家庭用太陽光発電 | 10~50kW未満 | 10円/kWh | 全量買取/余剰買取 | 20年 |
産業用太陽光発電 | 50kW以上 | 9.5円/kWh | 全量買取 | 20年 |
FIT制度の種類
固定価格買取制度の価格の推移を踏まえて、FIT制度を利用する場合の方法について確認しておきましょう。
太陽光発電の売電には、「全量売電」と「余剰売電」の2つの方式があります。
- 余剰売電:家庭内で使いきれない電気を売ること
- 全量売電:太陽光で発電した電気をすべて売ること
「固定買取制度/FIT制度」の買取価格は、2019年までは余剰売電での利用した方がお得でしたが、2020年からは、買取単価が家庭の電気使用量の料金単価を下回ったため、余剰売電よりも自家消費型にした方がメリットがあると言われています。
つまり、太陽光発電で作った電力は、家庭内で消費した方が、効果的に利用できるということになります。
太陽光発電の発電量が家庭で使う電気使用量よりも多くなるようにシステムを作っていけば、 電気代の節約にも繋がっていきます。
卒FIT後は自家消費型がおすすめ
固定買取制度の買取価格の下落により、売電収入による利益よりも、電力を売らずに家庭内で使った方がお得になるというケースもあり、この方法を自家消費型といいます。
自家消費型では太陽光発電システムで作られた電気をすべて家庭内で賄うことになります。
また、自家消費型で発電量を使いきれなかった場合には、蓄電池を設置して電気を貯めておくことも可能です。
蓄電池の最大のメリットは、天候の悪い日や停電時などに、貯めておいた電気を便利に使うことができることです。
太陽光発電で売電収入を得る方法に合わせて、自家消費型の方法についても考えておくと良いでしょう。
FIT制度に必要な手続きと注意点
太陽光発電のFIT制度を利用する際は、各種手続きが必要となります。申請前に手続きする際のポイントについて解説していきます。
FIT制度に必要な手続きについては以下の項目をチェックしましょう。
- 電気事業法に基づく届け出をする
- 電力会社と契約手続きを行う
- 電力会社に発電量を報告する
- 支払いに関する手続きを行う
- 税金の申告が必要になる可能性がある
電気事業法に基づく届け出をする
「固定価格買取制度/FIT制度」を利用するための手続き「事業計画認定申請」を行います。 経済産業省が利用する設備について認定するための手続きです。
「事業計画認定申請」の手続きは、家庭用であっても「事業」として申請が必要です。
「事業計画認定申請」は申請から認定までの期間は、およそ1〜3ヶ月程度かかります。
申請方法については、経済産業省のホームページよりオンライン申請ができます。
- 野立ての場合:土地の取得を証する書類(登記事項証明書など)
- 屋根上設置の場合:建物所有者の同意書類(建物の登記事項証明書など)
- 接続の同意を証する書類(接続契約書など)
- 構造図
- 配線図
- 委任状(代行事業者が申請するケースのみ)
- 印鑑登録証明書(代行事業者が申請するケースのみ)
電力会社と契約手続きを行う
経済産業省に申請する前には、事前に電力会社と契約「系統連系申請」を済ませておきましょう。
申請期間は電力会社や申請数によって違いはありますが、およそ2週間〜数か月程度ほどかかります。
電力会社との契約が済んでいない場合は、「事業計画認定申請」が受理されないため、順序よく手続きを踏んでいきましょう。
申請が受理されると、電力会社は申請者から買電するためのシステムを整備します。
系統連系申請はオンライン申請または郵送で手続きができます。
- 系統連系申請書
- 系統連系協議依頼票
- 単線結線図
- 付近図
- 構内図
- 主幹漏電ブレーカの仕様が分かる資料
- 認定証明書(JET証明書)
- 保護機能の整定範囲及び制定値一覧表
電力会社に発電量を報告する
FIT制度の手続きの前に、電気事業法による太陽光発電の区分について確認しましょう。
太陽光発電は「低圧」または「高圧」に分類されています。いずれかの違いで申請方法は異なりますので事前に確認しましょう。
- 低圧:設備の容量が50kW未満の場合(一般家庭用は低圧の場合場多い)
- 高圧:設備の容量が50kW以上の場合
支払いに関する手続きを行う
電力会社と契約する際は、口座振込依頼書(振込口座変更等)の申込先の申請を行います。
申請内容で記入ミスした場合、振込ができなかったり、通常の振込日より遅くなる場合がありますのでよく確認しましょう。
太陽光発電の売電収入は通常であれば、売電メーターの検針から振込まれるまで、およそ14〜20日くらいかかります。
また、売電収入の振込先口座を変更する際は、電力会社へ変更申請を行うようにしましょう。
税金の申告が必要になる可能性がある
家庭用で容量10kW以下の太陽光発電システムを導入した場合は、確定申告で売電収入 を申告しなければならないケースがあります。
申告が必要になるのは、売電収入で得た所得から経費を差し引いて年間で20万円以上の利益 があるケースとなります。
まとめ
太陽光発電を導入する際は、「固定価格買取制度/FIT制度」を利用すると初期費用回収に繋がったり、日本のエネルギー自給率を上げることに貢献することができます。
「固定価格買取制度/FIT制度」は、太陽光発電に必ず必要となる制度になりますので、内容をしっかり確認して効果的に利用して行くと良いでしょう。