太陽光発電を最適に長く利用するためには、設置後のメンテナンスが必要となります。
法律として定められたメンテナンス義務化にそって維持管理することや、そのために太陽光発電の発電効率や業者選びも重要なポイントとなります。
また、メンテナンス費用についても導入前にしっかり予算を立てて計画しておくことをおすすめします。
本記事では太陽光発電のメンテナンスの必要性と費用、発電効率や業者の選び方について解説していきます。
太陽光発電のメンテナンス義務化&重要性について
太陽光発電は、メンテナンスフリーと言われている高性能のシステムですが、長期的に利用する上では、定期的なメンテナンスは重要となります。
2017年4月1日に改正FIT法より、新たなルールとして、住宅用の太陽光発電にメンテナンスが義務化されることになっています。
住宅用の太陽光発電10kW未満は、メンテナンス義務化が必要。
FIT制度を利用する際は、住宅用太陽光発電でもメンテナンスが義務化となる。
メンテナンスが義務化となった理由は?
太陽光発電のメンテナンス義務化となった理由は以下のポイントがあげられます。
・設備機器の安全性の確保のため
・利用者や近隣住民の安全性のため
発電効率の低下を防止するため
・発電効率の低下の原因は、太陽光パネルの表面に汚れの付着や破損、周辺機器の故障などによって起こります。
・発電効率の低下は、初期費用の回収が遅れたり、売電収入が減ったりするデメリットが生じます。
・発電効率を高めるためには、設備機器の法定耐用年数と寿命について知っておくと良いでしょう。
・パワーコンディショナー:法定耐用年数17年 / 寿命15年~20年
・蓄電池:法定耐用年数6年 / 寿命20年~30年
設備機器の安全性確保のため
・太陽光発電設備の異常に気付くのが遅れて事故に繋がるケースもあります。
・太陽光発電の経年劣化によって固定していたボルトが緩んでしまった場合、強風によって太陽パネルが吹き飛ばされてしまう危険性も想定できます。
・定期点検で設備の異常に早く気付けば、自然災害による事故も未然に防ぐことができます。
・太陽光パネルは、雨風にさらされた状態に設置するため、耐久性に配慮した施工を行うことが必要です。そのためには専門知識のある設置業者を選ぶことが重要です。
利用者や近隣住民の安全性のため
・メンテナンスを行うことは、利用者の安全性や、近隣住民に対する安全確保のために重要な作業となります。
・太陽光発電を設置した後、維持管理が正しく行われない場合は、設備機器の故障によるトラブルによって、利用者に被害をもたらすケースもあり、近隣住民の方まで被害が広がってしまうケースもあります。
・自然災害によって太陽パネルが落下したり、太陽光パネルの火事により、近隣住民の家または人に危害を与えてしまう事件も発生しています。
太陽光発電のメンテナンス義務化の重要性
太陽光発電のメンテナンスについては、長期的に有効利用するためにも以下のポイントが重要となります。
・自然災害に備えることができる
・パネルの経年劣化に対応することができる
・売電収入の損失を防ぐ
・初期費用回収に繋がる
・太陽光発電を有効利用できる
維持管理費を抑えることができる
設備機器の異常を早期発見できれば、メーカー保証の無償サービスを利用できます。
自然災害に備えることができる
太陽光発電設備をこまめに点検して自然災害による被害を拡大させないことが重要です。
パネルの経年劣化に対応することができる
製品の寿命よりも短い期間で故障やトラブルが起きやすくなるリスクがあります。
メンテナンスを行うことで設備機器の劣化を防ぐことができます。
売電収入の損失を防ぐ
発電効率を高めるためには、太陽光パネルをいつも最適な状態にしておくことが必要です。
初期費用回収に繋がる
適切な定期点検によって発電効率を高めることは、費用対効果に関わる重要なポイントであり、初期費用回収にも繋がっていきます。
太陽光発電を有効利用できる
設置後に効率良く維持管理することで太陽光発電を、有効利用することができます。
太陽光発電のメンテナンスで変わる発電効率
太陽光発電の発電効率を高めるためには、設置後のメンテナンスが重要となります。
メンテナンスによって変わる発電効率について
太陽光パネルや周辺機器を定期的にメンテナンスすることは、発電効率を高めることに繋がります。
・メンテナンスをした場合 → 発電効率を高める →費用対効果を高める
発電量とは、太陽光発電で発電する電気の量で、システムを導入する際に判断となる数値です。気になる電気代の節約や売電収入を得るには「発電量」が目安となるため、太陽光発電を導入する前に自宅の設置条件から発電量のシミュレーションを行い、メーカーや製品について設置業者に相談して検討すると良いでしょう。
太陽エネルギーをどのくらい電気に変換できたかを示す数値です。この数値が高いほど太陽光エネルギーをムダなく利用して電気に変換できることになります。
発電量をできるだけ多くして発電効率を高めるためには、設置する地域、季節、天候、設置条件、使用期間などによって数値は変動します。
これらの発電効率に関わる条件を効率良く維持していくためには、設備機器を定期的にメンテナンスすることが重要となります。
発電量を低下させる要因
ではここで 太陽光発電で発電量を低下させる要因について確認しておきましょう。
太陽光発電パネルの汚れ
太陽光発電パネルに汚れがつくと、発電量の低下に繋がります。
鳥の糞や埃、落ちにくい汚れは、屋根上の掃除を定期的に行うことが必要です。
ガラスの破損やパネル内部の劣化、雨水の浸水などにも要注意です。太陽光パネルのメンテナンスのために、専門の清掃業者を呼んで定期的に掃除をすることをおすすめします。
太陽光発電設備の経年劣化
太陽光発電パネルは、利用期間が長くなれば劣化して品質が低下します。
利用してから10年間で2.7%、20年間で5.4%、30年間で8.1%の発電量が低下すると言われています。これらの数値に対して各製品メーカーは、製品保証の他に出力劣化を保証するという「出力保証」を提示しています。
太陽光パネルの寿命に合わせて、メーカー保証内にメンテナンスを行うことをおすすめします。
パワーコンディショナーの故障
パワーコンディショナ―は、太陽光発電で発電した電力を直流電気から家庭内で利用できる交流電気に交換する機器です。
太陽光パネルの周辺機器に故障が生じた場合、発電効率に大きく影響します。
パワーコンディショナーの異変を感じた際は、メンテナンス業者を呼んで点検してもらうことをおすすめします。
気温の変化
太陽光発電パネルの公称最大出力は、気温25度の環境で測定された数値になっています。
気温25度を1度超えると0.5%ほど発電量が低下すると言われています。太陽光を利用したシステムなので、真夏の方が太陽の日差しが強くて発電効率が良いと思いがちですが、実は25度を超えてしまうと発電効果が低下し、損失係数も多くなる計算になります。
太陽光パネル表面温度が上昇するのを防止するためには、パネル冷却用散水スプリンクラーなどで散水するなどが必要となります。
発電効率を高めるためのメンテナンス
発電効率を高めるためには、定期メンテナンスを4年に1回行うことが推奨されています。
また、自分でできる日常的な点検については、以下のポイントをチェックするようにしていきましょう。
・屋根に雨漏りはしていないか?
・架台のゆるみはないか?ボルトの固定は大丈夫か?
・配線ケーブルの破損はないか?
・接続箱の外が破損や腐食していないか?
・パワーコンディショナーの音は正常か?
・パワーコンディショナーの腐食や破損はないか?
・パワーコンディショナーのフィルターの目詰まりはないか?
・パワーコンディショナーのエラーメッセージはないか?
・発電量は低下していないか?
太陽光発電のメンテナンスの費用と内訳について
では、太陽光発電のメンテナンスでかかる費用について解説していきます。
メンテナンスの費用相場は?
・住宅用太陽光発電の容量を5KWとした場合、1回当たりの定期点検の費用相場は、約 2.9万円程度となっています。
・パワーコンディショナーは、例えば20年間で一度に交換した場合に約22.4 万円程度が費用相場となります。
・以上の数値から、1 kW あたりの年間の維持費に換算すると 3,690 円となります。
(※資源エネルギー庁2022年2月に公表したデータより)
太陽光発電のメンテナンスの内訳は?
太陽光発電のメンテナンス費用の内訳は以下の通りです。
・故障・修理代
・清掃費用
・廃棄・撤去費用
・保険料
定期点検・メンテナンスの費用
・1回あたり1万円〜3万円程度になります。
故障・修理代
・1枚あたり10万円〜15万円程度になります。
・ケーブルが断線した場合は、パネルを交換する必要があります。
・交換費用は1万円〜2万円程度。
・売電メーターは設置から10年ごとの交換が必要です。
・交換費用は電力会社によって異なり、無料で交換に対応してくれるところもあります。
清掃の費用相場
・太陽光発電パネル1枚あたり500円〜1,000円程度になります。
・除草作業は、草刈りの面積1㎡あたり50〜150円程度。
・1回あたり50,000円程度になります。
廃棄・撤去の費用相場
・撤去費は10万円くらい(パネルが20枚に相当)
・運搬費と処分費は合わせて5万円程度になります。
保険料
太陽光発電でのトラブルに備えて、保険・保証へ加入することをおすすめします。
加入できるおもな保険は、以下の通りです。
※保険料の相場
・地震保険:全損、大半損、小半損、一部損などの被害状況に応じて支払われます。
・動産総合保険:30,000円〜40,000円/年程度
・賠償責任保険:5,000円程度
・休業補償保険:10,000円程度
太陽光発電でメンテナンスを依頼する業者の選び方
太陽光発電のメンテナンスを正しく行うためには、業者選びも重要となります。
悪質な業者に依頼してしまうと、太陽光発電の導入効果が得られなくなってしまいますので、注意しましょう。
太陽光発電のメンテナンスが依頼できる業者
太陽光発電のメンテナンスは、専門知識や経験が必要となる作業が含まれるため、資格のある専門技術者、専門的な技術者のいる販売店や施工業者等に依頼することをおすすめします。
太陽光発電のメンテナンスができる認定資格として「太陽光発電メンテナンス技士」があります。「太陽光発電安全保安協会」が運用する資格で、太陽光発電の基礎知識やメンテナンスの技術を講習・研修した者が取得することができます。
他には、「太陽光発電検査協会(PIA)の技術認定」の資格は、資格取得後に「技術認定」が交付され、太陽光発電の保守点検をすることができるようになります。
メンテナンス業者の選び方のポイント
・太陽光発電を導入する際は、メンテナンスのサポートも対応してくれる業者を選ぶと良いでしょう。導入したときの業者と同じ業者に頼んだ方が、トラブルの原因などについても早く解決することができます。
・太陽光発電のシステムに特化した資格や知識、経験のある業者に依頼しましょう。業者選びの目安としては、施工業者が資格保持者であったり、地域密着型の業者などであれば安心して依頼できるでしょう。
・メンテナンス業者には、全国展開している企業と地方企業があります。全国展開している業者の場合は、地域ごとで下請け会社を派遣しているケースがあるため、下請け会社が太陽光発電のメンテナンスの知識があるかどうか確認が必要です。
地方企業の場合は、地元に密着した信頼性と経験のある業者であれば、問題なく対応してもらうこともできるでしょう。
・施工業者に頼む前には、メンテナンスの費用相場について事前に知っておくと良いでしょう。相場より高すぎても安すぎても問題です。費用相場の範囲内で、正しく作業を行ってもらえるように、複数社より見積もりを取ってから検討すると良いでしょう。
まとめ
太陽光発電による効果を最大化するためには、設備機器の定期メンテナンスや自分でできる日常点検が必要となります。法律では、一般住宅で太陽光発電を利用している場合は、メンテナンスの義務化に対応する必要があります。
太陽光発電のメンテナンス費用については、導入費用を考える際に一緒に計画的に予算を立てることをおすすめします。
また、メンテナンス業者を選ぶ際は、専門知識があって実績や経験があることを確認してから依頼するようにしましょう。