太陽光発電システムの設置方法は、一般的には屋根上や野立て、カーポート等が主流です。一方、太陽光パネルの設置スペースに限りがある場合は、建物の壁面に設置する壁面設置(垂直設置)が新しい方法として導入されています。
そこで、本記事では、太陽光パネルの壁面設置(垂直設置)について、設置した場合も発電効率、メリット・デメリットを解説します。
太陽光発電の壁面設置(垂直設置)とは?
太陽光発電システムを導入する際は、一般的に、住宅用では太陽光パネルを屋根の上に設置し、産業用の場合は野立て方式で設置することが多いです。
屋根上または野立てで設置するパネルの角度は、日射量を得やすいように最適な傾斜で施工することが必要です。
そのためには、太陽光パネルの発電効率を高めるために、屋根上や地面に架台を設けて太陽光が当たりやすい角度を設定します。
また、屋根上に設置する際は、パネルの傾斜以外に屋根の形状や方角についても考慮する必要があります。
一方、壁面設置(巣直設置)は、太陽光パネルを建物の壁面に設置する方式で、パネルの角度は、地面に対して垂直になります。
ビルやマンションなど、壁面積が大きい建物や一般住宅の外壁を利用して、太陽光パネルを設置することができます。
また、建物の壁面に太陽光パネルを固定するためには、レール材を用いて施工を行います。
壁面設置(垂直設置)は、他の設置方式と比べると、まだ施工例が少なく受注している施工会社も多くはありません。
ただし、太陽光発電を導入したくても屋根上や地面に設置スペースが限られている場合は、適切な設置業者に発注できれば、壁面設置(垂直設置)で設置できるメリットもあります。
したがって、太陽光発電の導入する際は、、壁面設置(垂直設置)は新しい施工方式として
選ぶ家庭も増える傾向にあると言われています。
設置方式 | パネル傾斜 | 用途 | 施工法 |
屋根上 | 30度 | 住宅用 | 屋根の種類に応じて施工方法が異なる |
野立て | 30度 | 産業用 | 基礎工事に野立て架台を設ける |
壁面 | 90度 | 住宅用/産業用 | 太陽光パネルと壁をレール材で固定する |
壁面設置(垂直設置)の発電効率について
太陽光パネルの最適な傾斜角度は、30度が理想的と言われています。通常、屋根の上に太陽光パネルを設置する場合は、屋根の形状や面積、方角とパネルの傾斜等について確認してから工事を始めます。
一方、壁面設置(垂直設置)は、壁面に太陽パネルを垂直に固定するので、傾斜角度は90度になります。
したがって、壁面設置(垂直設置)の場合は、パネルの傾斜が足りない分、屋根上の設置よりも 発電効率が低下することになります。
- 方角:南向きを100%とした場合、東南、南西、95.1%、真東、真西では82.8%日射量を確保できます。
- 傾斜:30度を100%とした場合、20°でも98.2%、日射量を確保できます。
- 設置方式:壁面設置(垂直設置)は、水平設置よりも発電効率が低下します。
壁面設置(垂直設置)のメリット・デメリット
太陽光パネルを壁面設置(垂直設置)した場合は、発電効率が低くなる特徴がありますが、
設置するメリットもいろいろあります。
では、壁面設置(垂直設置)で太陽光パネルを設置した場合のメリットとデメリットについて確認しましょう。
壁面設置(垂直設置)のメリット
太陽光発電で壁面設置(垂直設置)する際のメリットは以下の通りです。
- 屋根上や地面にスペースがなくても設置できる
- 建物の壁面積に合せて設置できる
- 積雪地域の自然環境に適用する
- 太陽光パネルに落ち葉やゴミが溜まりにくい
- 透明性の太陽光パネルもある
屋根上や地面にスペースがなくても設置できる
太陽光発電システムを導入する際に、屋根上や野立て以外の設置方法として選択肢が増えます。
例えば、屋根上やカーポートでの設置が難しかった一般住宅の建物に、壁面を利用した施工も可能になります。
また、屋根上では発電効率があまり期待できない条件の場合、壁面設置(垂直設置)の方が、発電量を得られるケースもあります。
したがって、太陽光発電の設置方式の選択技が増えれば、これから太陽光発電の導入を検討されている方は、今までよりも設置しやすくなるメリットがあります。
建物の壁面積に合せて設置できる
太陽光パネルを屋根上やカーポートで設置するよりも、壁面設置(垂直設置)の方が、設置面積を広く確保できるので、柔軟に設計することが可能です。
屋根上に太陽光パネルを設置する場合は、屋根の形状によってパネルの形や枚数を調整する必要があります。
一方、壁面設置(垂直設置)の場合は、フラットな場所に太陽光パネルを固定するので、変形のパネルを選ぶなど特殊な製品を選ぶ必要はなくなります。
積雪地域の自然環境に適用する
北海道や東北地方など、雪の多い地域では、屋根上の太陽光パネルに積もった雪によって発電効率が低下するリスクがあります。
また、屋根上の設置の場合、雪下ろし作業の手間があるため、太陽光発電の維持管理が通常の地域よりも負担が多くなります。
そこで、維持管理を簡単にするための方法として、積雪地域に壁面設置(垂直設置)の施工方式を選ぶことができます。
ただし、屋根上の設置よりも発電効率が下がる場合もありますので、必要に応じた発電量が得られるか?事前にシュミレーションすることが必要です。
太陽光パネルに落ち葉やゴミが溜まりにくい
太陽光パネルを屋根上や野立て設置した場合、パネルの上に落ち葉やゴミが溜まって発電効率を下げてしまう場合があります。
太陽光パネルは、導入後、利用し始めるとどうしてもパネルの表面にゴミが溜まってしまい、定期的に掃除する必要があります。
一方、壁面設置(垂直設置)の場合は、太陽パネルを地面から垂直に設置するため、ゴミが溜まるリスクが減ります。
透明タイプの太陽パネルもある
壁面設置(垂直設置)に対応できる太陽光パネルで、メーカーによっては、透明性のタイプの製品を選ぶこともできます。
透明性の高い特殊な太陽光パネルなので、屋内から外への視界が見やすく、採光も取り込んで利用できます。
発電する窓として、遮熱、断熱、紫外線カット、結露防止などの機能を備えて、次世代太陽パネルとして、競技場やビルなどに採用されています。
壁面設置(垂直設置)のデメリット
壁面設置(垂直設置)で太陽パネルを設置する際は、設置条件によってはデメリットになる場合もあります。
- 発電効率が下がる場合もある
- 光害リスクがある
- 施工例が少ない
発電効率が下がる場合もある
太陽光パネルの壁面設置(垂直設置)は、屋根上に設置するよりも発電効率は下がる傾向です。
ただし、屋根上や地面に必要なスペースが確保できない場合や、積雪地域など自然環境の影響が大きい場所には、壁面の方が良い場合もあります。
壁面設置(垂直設置)の施工方式は、あくまでも特殊な場合にふさわしい方法となりますので、 必要な発電量が見込めるか確認してから検討しましょう。
光害リスクがある
太陽光パネルを壁面設置(垂直設置)で施工した場合、パネルに太陽光が当たって反射し、近隣住宅に光害リスクが発生する可能性もあります。
太陽光パネルの反射トラブルは、事前の調査をしなかったために被害が大きくなり裁判沙汰になったケースもあります。
太陽光パネルを設置する際は、壁面設置(垂直設置)の場合はもちろん、他の施工方式であっても、必ず事前に光害リスクの有無について事前調査をしっかり行うようにしましょう。
施工例が少ない
太陽光パネルを壁面設置(垂直設置)は、施工例が少ないため、受注する施工会社もまだ少ない傾向です。また、施工発注できても屋根上の設置よりも工期が長くなるケースが多くなっています。
屋根上や野立て、カーポートでの設置に比べると壁面設置(垂直設置)については情報も少ないため、もし垂直設置を検討する場合は、専門知識のある設置業者を選んで、しっかり見積もりを取って確認しながら始めることをおすすめします。
太陽光パネルの発電効率に関わる要素
では、続いて、一般的に太陽光パネルの発電効率に関わる要素について確認しておきましょう。
太陽光パネルの施工方式を、屋根上、または壁面にするかどうか検討する際に、まずは発電効率について知っておくと良いでしょう。
太陽光発電を導入する際に、まず始めにすることは、屋根上に太陽光パネルを設置した場合の発電量についてシミュレーションすることです。
太陽光発電の発電量は日射量によってが変わりますので、設置場所の日射量を調べて計算を行います。
具体的な発電量の計算は、月間、年間ごとの日射量データを集めて計算します。
1日の発電量 = システム容量 × 日射量 × 損失係数(0.85)
- システム容量:太陽光パネルが発電できる量を表す数値です。 単位はkW(キロワット)で示します。別名「出力容量」または「発電容量」と言います。システム容量によって年間発電量と売電収入が左右されます。
- 日射量:太陽光から受けるエネルギーの量です。天候や季節の変化、地域性により変動します。単位は「kW/m2」または「W/m2」で示します。
例えば、2kWh/m2というのは、1kWの太陽光が2時間当たった場合のエネルギー量です。
- 損失係数:太陽光発電が発電する際の損失(ロス)を指します。 日本では「0.85」という数値が使われています。
なお、太陽光発電の発電量は、地域や時間帯、季節などによって日照時間も変わってきますので、年間の日射量の変動も含めて発電効率に関わる要素について確認しておきましょう。
以下は、太陽光発電で発電量に関わる要素についてです。
- 地域性
- 月別
- 時間帯
- 天候別
- 自然環境
- 太陽光パネルの汚れ
- 寿命
地域性
日射量が多い地域については、山梨県、長野県、徳島県、静岡県で、発電量が多くなっています。一方、青森県、秋田県は、日射量が少ない地域です。
傾向として、雨の多い太平洋側よりも内陸の方が日射量があり発電量は多くなっています。
また、本州の南の地域の方が気温が高く、日射量による影響もあるため、太陽光発電に向いている地域とも言えます。
月別
月別の平均発電量については、梅雨シーズンの6月を除く3月〜8月でが多くなる期間です。
台風シーズンの9月は発電量が低下する傾向です。
日差しの強い夏は、太陽光パネルの温度が25℃より高くなると発電量は低下します。
地域によっても異なりますが、関東では夏よりも春先5月から初夏にかけての方が多く発電する傾向です。
一方、積雪地方でも発電量については、冬の低温に強い太陽光パネルで温度が-40℃以上あれば稼働する機種もありますので、雪が多く降る地域だから太陽光発電は向いていないということも一概には言えません。
時間帯
晴れた日には正午をピークに左右対称の山を描くように発電量は変動します。
日照時間の長い夏であれば、早朝5時~6時ごろから発電し始めます。 日照時間の短くなる冬場は朝の7時~午後の5時ごろまで発電するようになります。
およそ11時~13時の間に1日の4割を発電するようになり、日の入りに向けてまた徐々に発電量が減っていくサイクルになっています。
天候別
晴れの日が一番発電量が多く、日の出から日没まで一日中晴れていれば最も発電効率が高くなります。
曇りの日でも発電量はありますが、晴れの日よりも発電量は半分くらいになり、雨の日は、4分の1以下程度の発電量になります。
自然環境
積雪による発電量への影響については、短期間の降雪の場合は、発電量を得ることができます。 ただし、太陽光パネル上に雪が降り積もってしまうと、パネルに汚れが付着した場合と同じように発電効率が低下します。
積雪による被害を抑える方法としては、太陽光パネルの角度を最低でも15度以上に傾けて設置すると、自然に積もった雪が落下するので雪対策に効果的です。
また、積雪地域での太陽光発電システムの設置は、雪の重みによる太陽光パネルの破損や架台の倒壊、屋根のゆがみなどのリスクを踏まえて、積雪耐性のある太陽光発電設備を選ぶことをおすすめします。
太陽光パネルの汚れ
太陽光発電パネルに汚れがつくと、発電量の低下に繋がります。
鳥の糞や埃、落ちにくい汚れは、屋根上の掃除を定期的に行うことが必要です。
ガラスの破損やパネル内部の劣化、雨水の浸水などにも要注意です。
また、野立て設置する場合は、定期的に除草作業が必要となります。
寿命
太陽光パネルの法定耐用年数は17年、期待寿命は20年〜30年とされています。
太陽光パネルメーカー各社には、出力保証が付いており、保証期間は20年〜25年が一般的です。
太陽光発電パネルは、利用期間が長くなれば劣化して品質が低下します。
利用してから10年間で2.7%、20年間で5.4%、30年間で8.1%の発電量が低下すると言われています。
太陽光パネルの劣化は、設置した地域や天候、利用状況などによって消耗する年数が変わってきます。
特に台風の多い地域や積雪の多い場所では、太陽光パネルの経年劣化に耐えるようなメーカー製品を選ぶことをおすすめします。
発電効果があれば太陽光パネルの壁面設置(垂直設置)はおすすめ
太陽光発電を壁面設置(垂直設置)する場合は、まずは発電量のシュミレーションを行って、導入効果が得られるか検討しましょう。
太陽光パネルの設置場所が確保できない場合は、施工方式の選択技として壁面設置(垂直設置)があります。
壁面設置(垂直設置)は、垂直に設置するため水平設置よりも発電効率が低下しますが、
必要な発電量が得られるのならば、導入効果があるケースもあります。
ただし、屋根上に設置するよりも、条件がいろいろ変ってくることや施工方法が違ってくるため、壁面設置(垂直設置)に詳しい設置業者に依頼することをおすすめします。
まとめ
太陽光発電システムの導入が増えてくることに伴い、住宅の屋根や土地面積に都合上、太陽パネルを設置できないケースも増えて来ています。
そこで、太陽光パネルを垂直に固定する方法として壁面設置(垂直設置)という新しい施工方式があります。
これから、太陽光発電を導入するご家庭では、屋根上の設置方法以外に、壁面設置(垂直設置)についても合わせて検討されると良いでしょう。