太陽光発電を導入する際は、屋根の方角や屋根の形状等によって発電効率が変動します。
太陽光パネルを設置するには、ご自宅の屋根によって向き不向きがありますので、事前に確認してから検討するようにしましょう。
本記事では、太陽光発電に不向きの北側屋根についてと、北面に設置した場合の反射トラブルについて解説していきます。
太陽光発電の向き不向き!向いていない家とは
太陽光発電を導入する際は、屋根の状況について確認しておきましょう。
一般的に推奨されている屋根とそうでない屋根については以下の通りです。
- 太陽光発電に向いている屋根:南向きの片流れ屋根
- 太陽光発電に向いていない屋根:北向きの片流れ屋根
これらの条件で設置が難しい場合は、太陽光パネルの下に架台を設けて屋根勾配を変えたり、方角を南東や南西、東西方向で検討することも可能です。
北面の片流れ屋根での設置については、メーカーによって推奨していない場合もありますので、ご自宅の屋根の状況を確認して検討すると良いでしょう。
屋根の傾斜角度の目安
太陽光パネルの傾斜角度は30度が理想的となっていますが、地域によって最適な角度も変わってきます。設置する場合の目安として各地域の最適な傾斜角度についてまとめておきます。
北海道と沖縄を比較してもわかるように、北の地域では角度の傾斜を高く、南の地域になるほど傾斜をゆるくする等、太陽光パネルの傾斜を調整することが必要になります。
また、積雪地域で太陽光パネルを設置する場合は、積雪による太陽光パネルの故障などを防ぐために、雪が落下しやすい傾斜が必要となるケースもあります。
屋根の傾斜角度については、地域ごとの気候や特徴を踏まえて、設置業者と相談するようにしましょう。
地域 | 最適な屋根傾斜 |
北海道/札幌 | 34.8度 |
宮城県/仙台 | 34.5度 |
東京都/八王子 | 33.0度 |
愛知県/名古屋 | 32.5度 |
大阪府/大阪 | 29.2度 |
愛媛県/松山 | 28.5度 |
福岡県/福岡 | 28.2度 |
鹿児島県/鹿児島 | 27.7度 |
沖縄県/那覇 | 17.6度 |
太陽光発電における北向きの片流れ屋根のデメリット
では、もし、太陽光発電で北向きの片流れ屋根に設置した場合、どんなデメリットがあるのか確認しておきましょう。
北向きの片流れ屋根のデメリット
- 北向きでは発電量が少ない
- 初期費用回収に時間がかかる
- 北向き設置は反射光トラブルがある
北向きでは発電量が少ない
太陽光発電の発電量は日照時間によって決まるため、北向き設置と南向き設置を比較した場合、大きな発電量の差が生じます。
南向きであれば、日照時間が長く効率よく発電できる時間が増えるので発電量は多くなりますが、北向きに設置した場合、日照時間が短いため発電量は少なくなります。
初期費用回収に時間がかかる
北向き設置の場合、発電量がほとんど得られないため、売電収入を増やすことや電気代を節約することも難しくなります。
また、太陽光パネルを北向きに設置するには、架台費用も発生するため、初期費用も通常の費用よりも高めになります。
一般的に太陽光発電の初期費用は、10年前後で回収できると言われていますが、発電量が少なく余剰電力があまり得られないので、元を取るにも時間がかかる可能性が高くなります。
北向き設置は反射光トラブルがある
太陽光パネルを北向きに設置した場合、日光が太陽光パネルが反射してご近所の建物の窓などに反射した光が差し込んで問題が起こるケースがあります。
ご近所の方が眩しいと感じる弊害や反射光で部屋の温度が上昇する被害などがあります。
反射光トラブルについては、太陽光パネルを設置する前に、業者とよく相談して近隣住民への影響を考える必要があります。
北向きの片流れ屋根が太陽光発電に不利な理由
太陽光パネルを南向きに設置した場合、日射量を100%だとすると、北面は65%程度になります。北西・北東は73%、西と東は85%、南西・南東は96%前後となります。
もし、北向きに設置したい場合は、太陽光パネル下に架台を設けて調整することもできます。
架台を施工する場合は屋根への負担も考えて、さらに台風などが多い地域では強風によるリスクも考えて設置する必要があります。
架台の費用相場について
架台とは、太陽光パネルを屋根などに固定する台のことです。パネルの方角や傾斜が、そのままの状態では発電効率が低い場合に架台を設けて調整します。
架台の相場は1kWあたり2.1万程度になります。
家庭で多く利用されている容量3〜5kWの太陽光発電の場合、およそ6.3万〜10.5万程度になります。
積雪の多い地域などで使用する架台は、通常とは部材が異なるため、費用が異なります。
北側の屋根の太陽光発電設置は「反射」に注意
太陽光発電を北向きに設置した場合、反射光問題について確認しておきましょう。
反射光問題について
太陽光発電の設置方法が不適切であった場合、反射光による被害が発生しています。
反射光による問題は、被害者側がどれだけの不快を感じるかによって裁判にまで発展してしまうケースもあります。
太陽光発電は、長期にわたって利用するシステムであるため一度設置した設備は簡単に撤去することは難しく、もし、反射光問題になるような位置に設置してしまった場合に、被害者に対して少しぐらいの光害は我慢してほしいという訳にもいかなくなります。
太陽光発電は、発電効果を考えるだけでなく、近隣住民に対する配慮も必要となります。
では、過去に問題となった反射光問題の事例について紹介しておきましょう。
2015年兵庫県姫路市で起こった反射光問題の事例
大規模な産業用太陽光発電所から反射された光が、民家に差し込んで住民の男性が熱中症被害を受けたことで設置会社に訴訟を起こした兵庫県での事例です。
被害者側の主張は、長時間、家の窓から反射光が差し込んでくる状況と室内温度の高温になって熱中症になったということです。裁判では、反射光による実害を証明できずに、2017年に訴えを取り下げるという結果となっています。
2012年横浜市で起こった反射光問題の事例
太陽光パネルを設置した家の近隣住民が、太陽光発電パネルの撤去を求めて、施工者と新築住宅所有者に対して提訴した横浜市での事例です。新築住宅所有者の家の太陽光パネルの位置は、南側と北側に設置してあり、反射光トラブルとなったのは、北側に隣接している住民からの訴えです。
横浜地裁は、「受忍限度を超える」という被害者側の主張を受けて、新築住宅所有者に対して、太陽光パネルの撤去と設置会社に対して被害額22万円を支払うように命じましたが、二審では「受忍限度を超えていない」という理由で逆転しています。
反射光問題を解決する方法
反射光問題を解決する方法について以下のポイントを確認しておきましょう。
- 設置業者に相談する
- 設置する屋根や近隣周辺を確認する
- 近隣住民とコミュニケーションを取る
設置業者に相談する
反射光が問題になりやすいのは、太陽光パネルを北向きに設置した場合がほとんどです。南向きに設置した場合は、反射光のトラブルは発生しにくい傾向です。
反射光問題が各地で起こっていますので、専門家である設置業者であれば相談やアドバイスをしてくれるはずです。
太陽光発電は、導入前にシュミレーションを行うことが事前準備として必要になるため、反射光による光害が起きないように、しっかり確認して後から後悔のないようにしていきましょう。
設置する屋根や近隣周辺を確認する
まずは、自宅の屋根が、北向きで片流れ屋根でないかどうか確認します。
また、近隣周辺の建物や民家に関わる影響についてもチェックしましょう。
太陽光パネルの代わりに鏡をあてて反射光トラブルの原因にならないか?シュミレーションしてみると良いでしょう。
近隣周辺に反射光による影響が起こりやすい家がある場合は、設置業者に相談して適切な方法を選ぶことをおすすめします。
近隣住民とコミュニケーションを取る
太陽光発電を導入する際は、近隣住民に太陽光パネルを設置する旨を伝えておくと良いでしょう。
反射光問題が起こった場合に、話し合いをするにも普段からご近所どうしのコミュニケーションがあった方が大げさにならない可能性もあります。
太陽光発電は、長く利用するシステムであるため、反射光問題以外でも何かトラブルが発生することもありえますので、普段から近隣住民と良い関係性を保つように心がけましょう。
屋根の形状による太陽光発電の向き不向きの条件
北向き片流れ屋根以外で太陽光発電の設置に向き不向きな条件について確認していきましょう。
屋根の条件については方角以外に屋根の形状についてもチェックしましょう。
屋根の形状には、「陸屋根」「片流れ屋根」「切妻屋根」「寄棟屋根」「方形屋根」があり、それぞれの特徴によって設置する太陽光パネルの発電量も変わってきます。
陸屋根
傾斜のない水平な屋根。水平のままだと日射量が得られないため、太陽光パネルの下に架台を設置すれば、真南に向けることができます。
片流れ屋根
屋根1面が一方向だけに傾斜している屋根。南向きの場合は問題ありませんが、北向きの場合は、発電効率が低くなります。
切妻屋根
屋根面が2方向に傾斜している屋根。屋根の方角が東西の場合は、東側と西側の2面にパネルを設置し、屋根の方角が南北の場合は、南側に設置することができます。
寄棟屋根
屋根面が4方向に傾斜している屋根。4方向の1面は必ず南側にあるため、発電効率を得ることができます。
方形屋根
ピラミッド型で、屋根面が4方向に傾斜している屋根。寄棟屋根と同様に、4方向の1面は必ず南側にあるため、発電効率を得ることができます。
その他、太陽光発電に向き不向きの条件
北向き片流れ屋根であったり、屋根の形状がふさわしくなかったり等以外に、太陽光発電に向き不向きの条件についてまとめておきます。
- 屋根が小さい
- 建物が老朽化している
- 周囲に障害物がある
- 年間の日射量は地域で違う
- 月別で発電量が違う
- 積雪によって発電量が違う
- メンテナンス不足で発電量が違う
屋根が小さい
屋根面積が小さいと、太陽光パネルの枚数が限られるため、発電量が少なくなる傾向です。
太陽光発電は一定の枚数以上のパネルを設置しないと発電効果がないため、屋根面積に対して設置できるパネル枚数に対して発電量を計算する必要があります。
建物が老朽化している
古い建物の場合、屋根の状態について確認が必要です。太陽光パネルの荷重に耐えられる屋根であるか、導入前に専門家に依頼して点検しましょう。
もし、老朽化によって設置が難しい場合はリフォームが必要になる場合もあります。
建築から30年近く経過している場合は、屋根の状態を万全にしてから太陽光発電の導入を検討しましょう。
周囲に障害物がある
太陽光発電の発電量に影響する近隣周辺の建物ビルや大きな樹木などについては、1日の太陽の動きを観察して障害物とならないか確認しましょう。
また、将来的に建設予定のビル等が周りに建たないか調べておきましょう。
年間の日射量は地域で違う
環境省によるNEDOの日射量 データによる都道府県庁所在地の「年平均日射量」によりますと、 方角は南向きで角度110度のデータとした場合、甲府、静岡、高知、宮崎、熊本、鹿児島、那覇が、日射量が多く発電量も多くなっています。
日射量が3.41kWhともっとも少ないのは、秋田県秋田市です。屋根の条件が良くても、地域によって発電効率も変動します。
月別で発電量が違う
月別の平均発電量については、梅雨シーズンの6月を除く3月〜8月でが多くなる期間です。
台風シーズンの9月は発電量が低下する傾向です。
日差しの強い夏は、太陽光パネルの温度が25℃より低くなると発電量は低下します。
地域によっても異なりますが、関東では夏よりも春先5月から初夏にかけての方が多く発電する傾向です。
一方、積雪地方の発電量については、冬の低温に強い太陽光パネルで温度が-40℃以上あれば稼働する機種もありますので、雪が多く降る地域だから太陽光発電は向いていないということも一概には言えません。
積雪によって発電量が違う
積雪による発電量への影響については、短期間の降雪の場合は、発電量を得ることができます。 ただし、太陽光パネル上に雪が降り積もってしまうと、パネルに汚れが付着した場合と同じように発電効率が低下します。
積雪による被害を抑える方法としては、太陽光パネルの角度を最低でも15度以上に傾けて設置すると、自然に積もった雪が落下するので雪対策に効果的です。
また、積雪地域での太陽光発電システムの設置は、雪の重みによる太陽光パネルの破損や架台の倒壊、屋根のゆがみなどのリスクを踏まえて、積雪耐性のある太陽光発電設備を選ぶことをおすすめします。
メンテナンス不足で発電量が違う
太陽光発電は、適切な条件で設置したとしても、導入後にメンテナンスを行わないと、設備故障の原因となり導入効果が半減してしまいます。
太陽光発電システムの寿命に合わせて、長期的に利用するには定期的なメンテナンスと日常的な点検が必要となります。
太陽光パネルの期待寿命は20年〜30年程度で、メーカー各社には出力保証が付いており、保証期間は20年〜25年が一般的です。
太陽光発電の発電量を確保するためにも、メンテナンスを計画的に行うことをおすすめします。
まとめ
太陽光発電を北向きの屋根に設置した場合は、発電量が少なくあまり導入効果が期待できない傾向です。また北側に設置するリスクとして反射光問題になる可能性が高いことも確認しておきましょう。
太陽光パネルの理想的な設置条件は、南向きで屋根面積が一定に確保できて日照時間が長く稼働できることです。
もし、最適な条件が確保できない場合は、専門の設置業者に相談してから検討すると良いでしょう。