太陽光発電は、FIT制度を利用し10年間固定買取価格で売電が可能です。では、11年目から後はどのように運用したらよいのか?続けて売電もするつもりでいるので廃止になる噂もあって心配?など疑問点も多いでしょう。
そこで、本記事では、太陽光発電の売電廃止の噂についてと、導入してから10年後の運用方法として自家消費型のメリットと引き続き売電する場合の注意点等について解説していきます。
太陽光発電の売電制度は廃止されるの?
太陽光発電の売電価格は年々下落の推移となっていますが、固定価格買取制度(FIT制度)が廃止になるということはありません。
廃止になるのでは?という噂については、買取期間満了後の運用方法についての方針や、売電終了にかかわる「2019年問題」が影響していることがあります。
2009年11月にスタートした固定価格買取制度(FIT制度)は、10年後の2019年11月以降、買い取り期間が満了した後、余剰電力の取り扱いをどうするか?という問題について利用者の間で情報が錯綜した経緯があります。
当時の売電価格が48円/kWhと高額であったため契約者が急増し、買い取り期間満了を迎える利用者が多かったこともあり、制度廃止の噂やその後の運用方法の方針について懸念が広がったということがありました。
つまり、太陽光発電の売電契約が満了となる10年後を過ぎたら、11年目からどのように運用したらよいか?という疑問点が、売電の廃止の噂に繋がったということがあります。
したがって、売電制度を正しく利用するためには、固定価格買取満了後、11年目以降の運用について今から準備しておくことが必要になるということです。
また、将来的に太陽光発電の売電が廃止される予想としては、経済産業省が2025年の目標数値を公表していることを踏まえると、2025年からの買取期間10年後の2035年、および20年後となる2045年までは、廃止の可能性は低いと言われています。
現在太陽光発電の売電は廃止されていない
固定価格買取制度(FIT制度)については、2023年現在、申請を受け付けています。
申請の各種手続きについては、経済産業省への認定申請「事業計画認定申請」と電力会社との契約「系統連系申請」を行う必要があります。
2023年度の一般住宅用10kW未満の買い取り価格は「16円」で、契約してから10年間の固定買取期間で売電を行うことができます。産業用の場合は買取価格や期間などは異なります。
※2023年度以降の価格表(調達価格1kWhあたり)
太陽光発電の種類 | 発電容量 | 売電価格 | 買取方法 | 買取期間 |
家庭用太陽光発電 | 10kW未満 | 16円/kWh | 全量買取/余剰買取 | 10年 |
産業用・家庭用太陽光発電 | 10~50kW未満 | 10円/kWh | 全量買取/余剰買取 | 20年 |
産業用太陽光発電 | 50kW以上 | 9.5円/kWh | 全量買取 | 20年 |
【2023年度最新】太陽光発電の売電価格について
余剰電力の売電価格は、今後も下落する傾向にあるため、太陽光発電を導入する際は、今後の運用についてしっかり計画することをおすすめします。
国としては、今後も売電価格を引き下げていく方針であると公表しているため、固定買取制度を利用して売電したい方は、できれば早めに契約した方がお得です。
太陽光発電の売電価格の推移
「経済産業省資源エネルギー庁」による売電価格の推移は、制度スター時の「48円」から2023年現在「16円」へと、1/3まで下がっています。
売電価格の動向については、2030年度までにこの買い取り価格を7円/kWhとすることを目指しているため、今後もさらに引き下げられることが想定できます。
では、売電価格が下がったので太陽光発電を導入するメリットはないのでは?という疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。そこで、知っておきたいことは、太陽光発電の売電価格が下がった理由についてです。
売電価格が下がった理由
太陽光発電の売電価格が下がってきている理由は、導入コストが安くなったことがあげられます。
売電価格の設定は、太陽光発電の初期費用や工事費や維持費などに合わせて考慮されていますが、年々、太陽光発電設備を安く購入できるようになってきており、市場の拡大によって売電価格が調整されるようになっています。
つまり、もともと売電価格は、初期費用を回収できるように設定されているので、初期費用が安くなれば売電価格が下がることになります。
では、太陽光発電の導入をさらに先延ばしした方が、もっと安く買えるようになるのでは?と考える方もいるでしょう。しかし、先延ばしした分、売電価格も低くなっていくため、結果としては、費用対効果はほとんど変わらないと言えるでしょう。
これから、太陽光発電を導入したい方は、初期費用が以前より安くなったこと、売電価格が下がってきていることを踏まえて、導入のタイミングを検討すると良いでしょう。
太陽光発電 10年後 どうしてる?
現在、既に売電契約していて10年後の運用について検討している方は、引き続き売電するのか?または自家消費型へとシフトするのか?について検討するとよいでしょう。
10年後、引き続き売電する際は、買取価格の変動に左右されるため常に最新の情報を得る必要があり、電力会社の設定したプランに従って売電し続けることになります。
一方、自家消費型にした場合は、買い取り制度のルールに影響されずに電気を賄うことができます。自宅の電気消費量と発電量のバランスをコントロールできれば、経済的なメリットを得ることも可能になります。
導入後10年後のおすすめの運用方法
太陽光発電の売電買取期間が満了となった後は、どのように運用していけば良いのか?ポイントを解説していきます。
売電価格の下落という状況であるため、11年目からは自家消費型へと切り替えた方がメリットが大きいと言われています。
自家消費に切り替えるメリット
太陽光発電で自家消費型に切り替えるということは、太陽光パネルで発電した電気を全て家庭内で賄うという方法になります。
太陽光発電を利用した自家消費型の生活では、さらに蓄電池を導入することで、貯めておいた電気を効率よく使うことが可能になります。
では、自家消費型にした場合のメリットについて解説していきます。
・停電時に利用できる
・CO2を削減できる
・電気自動車の充電に使える
電気料金が削減できる
電力会社の高い電気を買わずに太陽光発電で作った電気で賄うようにすることで、自家消費型のスタイルに切り替えて電気代値上がりの対策に備えることができます。
1日の発電量に対して自宅の電気使用量が少なければ、電気代をできるだけゼロ円に近づけることも可能になります。
自家消費型に切り替えて電気代をできるだけゼロ円に近づける方法としては以下のポイントを確認しておきましょう。
停電時に利用できる
太陽光発電で自家消費型に切り替えて蓄電池を設置すれば、停電時の非常用電源として備えることができます。余剰電力を蓄電池に貯めておくように切り替えれば、非常時に停電が続いてもストレスなく電気を使うことができるようになります。
ただし、蓄電池の容量には制限があるため、ご自宅の電気使用量に合わせて適切な容量の製品を選ぶことが必要です。
目安としては一般的に停電時の1日の消費電力が約4kWhと言われているため、蓄電池は容量4kWh以上の製品をおすすめします。
また、非常時に使いたい電化製品などに合わせて、適切な容量の蓄電池を用意すると良いでしょう。
※電化製品と消費電力の目安は以下の通りです。気を付けたい点としては、消費電力の大きい電化製品を同時に利用すると、蓄電池でカバーしきれない場合もありますので、停電時には必要最低限の電気を利用することをおすすめします。
電化製品 | 消費電力 |
エアコン | 300W~3,000W |
IHクッキングヒーター | 1,400W~3,000W |
ファンヒーター | 10W~450W |
洗濯機 | 200W~400W |
冷蔵庫 | 100W~300W |
電子レンジ | 1,000W~1,400W |
食器洗い機 | 1,100W~1,300W |
パソコン | 100W~300W |
液晶テレビ | 300W~500W |
CO2を削減できる
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた国の方針により、CO2削減の取り組みが求められています。
現在、利用している化石燃料による火力発電は、1kWhあたり約690gのCO2を排出していますが、太陽光発電を導入すれば、CO2排出量は1kWhあたり17〜48gと大幅に削減することができるようになります。
太陽光発電の導入は、自家消費型生活のすすめとして国が推進している取り組みです。
環境省が公表している「地域脱炭素ロードマップ」では、衣食住・移動・買い物など日常生活における脱炭素行動と暮らしのメリットを「ゼロカーボンアクション」として提案しています。
設定されているアクションリストを一通り知っておくと、太陽光発電を導入して自家消費型で生活するためのヒントとなります。
電気自動車の充電に使える
自家消費型の運用としては、電気自動車に電気を貯めるという方法もあります。発電した電気をガソリンの代わりに使えば、自家用車の維持費を大幅に減らすことが可能になります。
今まで売電していた余剰電力は、自家消費型で電気自動車の充電として利用できるようになります。
また、電気自動車のバッテリーを蓄電池としても利用することもできます。
自動車のバッテリーは一般的な容量が40kWhくらいなので、家庭用の蓄電池よりも容量が大きく、非常用の電気としても使うことが可能です。
例えば、災害時の停電が3日間続いた場合でも、蓄電容量が多い電気自動車であれば、いつも通りに電気を使って生活をすることができるようになります。
家庭用蓄電池の一般的な容量2kWh〜12kWhとして比較すると、電気自動車メーカー別の蓄電容量は以下の通りです。
製品名 | 容量 |
eQ(トヨタ) | 12kWh |
i-MiEV(三菱) | 16kWh |
フィットEV(ホンダ) | 20kWh |
デミオEV(マツダ) | 20kWh |
リーフ(日産) | 24kWh |
テスラ | 75kWh~100kWh |
また、初期費用については、蓄電池としても利用できる電気自動車と家庭用の蓄電池を比較すると大幅に異なるため、目的やライフスタイルなどに合わせて予算を考えると良いでしょう。
なお、電気自動車と蓄電池どちらも、自治体による補助金制度が利用できますので合わせて検討することをおすすめします。
10年後も売電を続ける為には?
住宅用の太陽光発電では、買い取り期間10年後も引き続き売電することができます。
ただし、FIT制度の買取方式に関するルールが改定される場合もありますので、随時情報を確認することが必要です。
また、継続して売電する場合は、今までの売電価格よりも大幅に下がることを踏まえて契約するかどうか検討しましょう。
引き続き売電を続けるには、今までの電力会社と継続する場合、もしくは、他の新電力会社売電先を変更することも可能です。
電力自由化以降に新しく参入してきた新電力会社は、大手電力会社に売電するよりも高い価格で買い取ってもらえるケースもありますので、新たに契約先を見直すことをおすすめします。
まとめ
太陽光発電の売電が廃止されるという情報は、現在2023年時点ではありません。引き続き固定買取制度を利用し、契約から10年の買取期間に固定価格で売電することが可能です。
また、契約満了から11年目以降の運用については、引き続き売電をすることは可能ですが、売電価格は大幅に下がることになりますので、できれば自家消費型に切り替えることをおすすめします。
自宅で発電した電気は、蓄電池を併用して効率良く利用する方が経済的なメリットにも繋がり、国が推進するカーボンニュートラルの実現にも貢献することができます。