太陽光発電のメリットのひとつは、災害対策に備えることができることです。
災害によって停電が続いた場合にも、太陽光発電があれば、電力会社の電力が’使えなくても自家消費型で電気を賄うことが可能になります。
ただし、停電時の太陽光発電の利用方法については、「自立運転機能」の切り替えや、停電時に使える出力の上限などについて知っておく必要はあります。また、蓄電池があれば、停電が長引いても安心です。
そこで、本記事では、太陽光発電の電気を停電時に使える方法や、蓄電池を併用するメリットなどについて、災害対策となる内容を解説していきます。
太陽光発電があれば停電時も電気が使える!
太陽光発電は、停電時でも電気を使うことが可能です。ここで気を付けたいことは、停電になっても使えるようにパワーコンディショナーの「自立運転機能」を稼働させることです。
パワーコンディショナーは、太陽光発電で作った電力を家庭で使えるように直流から交流へ電力を変換する機器です。パワーコンディショナーには、非常時用の機能として「自立運転機能」が搭載されています。
もし、停電が起きた場合には、太陽光発電は通常通りの設定では、いつも通りに電気を使うことはできないため、「自立運転機能」を利用することで非常時用の電源を確保することができるようになります。
つまり、パワーコンディショナ―の「自立運転機能」に切り替えると、電力会社の電力供給が止まっても、太陽光発電で発電した電気を停電用のコンセントから使えるようになるということです。
では、パワーコンディショナーの「自立運転機能」について、切り替える方法や非常用コンセントから使える最大出力などについて、もう少し詳しく解説していきます。
停電時に自立運転に切り替える方法と最大出力について
突然、停電になった際、すぐに電気を使えるように「自立運転機能」の使い方について確認しておきましょう。
以下は、「自立運転機能」に切り替える手順です。
- 通常の電源用コンセントとは別の非常時用の「自動運転コンセント」を確認します。
- 発火などによる火事や事故を防ぐために主電源のブレーカーを【OFF】にします。
- 太陽光発電用のブレーカーを【OFF】にします。
- 太陽光発電システムのパワーコンディショナーと分電盤の間のブレーカーを切ります。
- 使用する家電等を自立運転用コンセントに接続して、運転モード切替スイッチを【自立】にします。
- 【緑】ランプが点滅し、「自立運転中」のメッセージが表示されます。
- コンセントの表示ランプが点灯したら電気を使用できます。
「自動運転コンセント」の場所を確認しておく
また、非常時用の「自動運転コンセント」の場所については、パワーコンディショナーを設置する際に確認しておきましょう。
突然の停電で、「自動運転コンセント」の場所が見当たらなくて困った、というケースもあります。暗くなってから慌てないように事前に確認しておくことをおすすめします。
コンセントの場所がわからない場合は、設置業者に再確認しておくことをおすすめします。
停電時に使える電力は1,500Wまで
「自立運転機能」に切り替えても、家にあるすべての家電が使用できるわけではないことを抑えておきましょう。
では、1,500Wの出力で使える家電にはどんな種類があるのか?主な家電の消費電力は以下の表を参考にして下さい。
最大出力1,500Wに合わせて、一度に複数の家電を稼働させないようにしましょう。
携帯やパソコン、テレビ、冷蔵庫や洗濯機など消費電力の少ない家電は、1,500W以内であれば同時に使うこともできます。一方、消費電力の大きいIHクッキングヒーターやエアコン等は、同時に稼働することはできないため注意が必要です。
家電 | 消費電力 | 家電 | 消費電力 |
IHクッキングヒーター | 1400-3000W | 掃除機 | 850-1000W |
エアコン | 300-3000W | テレビ | 300-500W |
電子レンジ | 500-1400W | 洗濯機 | 200-400W |
電気ポット | 900-1400W | 冷蔵庫 | 100-300W |
アイロン | 1200-1300W | 炊飯器 | 100-300W |
ドライヤー | 600-1200W | ノートPC | 50-150W |
食器洗い乾燥機 | 1,300W | 携帯の充電 | 5-15W |
なお、「自立運転機能」を利用する際は、最大出力1,500Wまでの上限に気を付ける以外に、 危険リスクを伴う医療機器、灯油やガスを用いる冷暖房機器などには接続しないように注意しましょう。
「自立運転機能」 で使える電力上限が1,500Wである理由
では、なぜ?1,500Wの上限があるのか?確認しておきましょう。
パワーコンディショナーの自立運転機能はあくまで「非常用」なので、家庭用コンセントの容量に合わせて制限を設けています。
したがって、1つのコンセントで1使える電力は500Wまでになります。
※電力(W)=電圧(V)×電流(A)
また、太陽光発電は日射量により発電量が変動するため、天候等によって発電量が少ない場合は1,500W使用できないことがあります。したがって、基本的に1,500W程度に制限を設けた方が、停電しても一定時間に安定して電気を利用することができるようになります。
停電から復旧した後にすべきことは?
停電から復旧した場合は、電力会社からの電気に切り替えるためには、
「自立運転機能」から「連系運転」へ戻しましょう。
以下は、停電から復旧後の「連系運転」への切替手順です。
- 自立運転用コンセントからプラグを抜いて、運転モード切替スイッチを【OFF】にします。
- 【緑】のランプが点滅しているのを確認します。
- 太陽光発電用ブレーカを【ON】にします。
- 通常どおり電気を使うことができます。
なお、操作方法については、各メーカーごとに異なりますので、ご利用のパワーコンディショナーの機種に合わせて確認しておきましょう。
太陽光発電 「自立運転機能」 の操作方法シャープの場合
「自立運転機能」の切り替えについて、パワーコンディショナーのメーカー『シャープ』の場合について参考に紹介していきます。
- シャープの「自立運転機能」は、停電を検知すると安全のためパワーコンディショナーの運転を停止します。
- 停電が起こった場合に、わかりやすく画面やランプ表示でお知らせする機能が付いています。
- 蓄電池を設置している場合は、事前に自動切替設定をしておけば、停電から復帰までの切り替え操作は不要です。
「自立運転機能」への切替手順については、製品の仕様によって操作方法は異なります。
詳しい操作方法については、シャープのホームページより動画で確認することができます。
あらかじめ蓄電池を導入していれば停電時も安心
「自立運転機能」を利用すれば、太陽光発電は停電時に使えるということがわかりましたね。
では、さらに効率良く太陽光発電を稼働させる方法として「蓄電池」の併用について解説していきます。
停電時の蓄電池のメリットを解説
停電時に、太陽光発電と「蓄電池」を併用するメリットを確認していきましょう。
- 夜でも電気が使える
- 危険リスクを減らせる
- 大容量の蓄電池であれば安心
夜でも電気が使える
太陽光発電の弱点は、夜に発電しないという点ですが、「蓄電池」を併用することで問題は解消されます。
「蓄電池」を設置しておけば、昼間に発電した電気を夜に使う事ができるようになるため、突然の停電にも即座に対応することができるようになります。
夜に停電が続いた場合には、電気が使えないと暗闇での二次被害が起こるリスクもあるため、 「蓄電池」は、停電時の安全対策にも有効的です。
危険リスクを減らせる
大規模な停電が長く続いた場合は、電気が使えないことで健康被害や命にかかわる問題が発生することも考えられます。
特に、高齢者や小さい子供、病気療養中の家族がいる世帯では、電気が使えない生活は体調管理に影響が出てきます。
停電によって、通常の生活よりも不便になることは仕方ありませんが、せめて「蓄電池」を設置しておくことで、万が一のリスクを抑えることができるようになります。
大容量の蓄電池であれば安心
大きい容量の蓄電池を設置しておくと、停電時でも電気を便利に賄うことができます。
具体的には、ご家庭で停電時に使いたい出力に合わせて「蓄電池」の容量について検討すると良いでしょう。
停電時でも普段通りに生活したいのか?最低限の電源で賄う程度で良いのか?停電時の過ごし方を想定して「蓄電池」の容量を選ぶことをおすすめします。
※「蓄電池」の容量は、消費電力量×時間(kWh)で計算できます。
- 小型蓄電池:4kWh〜5kWh
- 中型蓄電池:7kWh程度
- 大型蓄電池:10kWh前後
停電時に蓄電池を効率よく使うためのポイント
停電時に「蓄電池」を利用する際に知っておきたいポイントについて確認しましょう。
- 100V・200Ⅴ対応の蓄電池がある
- 全量負荷・特定負荷の蓄電池がある
100V・200Ⅴ対応の蓄電池がある
200V機器に対応している「蓄電池」は、使える家電の出力が大きくても稼働することができるので便利です。
エアコン、エコキュート、IHクッキングヒーターなどは、200V対応の家電になるため、100V機器対応の「蓄電池」では、稼働することは難しくなります。
例えば、停電時に太陽光発電の「自立運転機能」を利用して稼働させられるエアコンのタイプは100Vのものに限られます。
また、夜は太陽光発電でエアコンを稼働することができませんが、蓄電池があれば、昼間に発電した電力を貯めておいて夜間に使えるようになります。
停電時でもエアコンを動かすためには、100Vのエアコンで、蓄電池との併用で検討すると良いでしょう。
全量負荷・特定負荷の蓄電池がある
蓄電池の負荷の種類「全負荷型」または「特定負荷型」のどちらを選ぶかによって、停電時の活用範囲が違ってきます。
- 全負荷型
すべての負荷を賄える蓄電池です。
災害時に基本的にはいつも使っている家電や電気機器を利用できるので、容量が大きい分、安心度は高くなります。
全負荷型の蓄電池は、オール電化の家庭や、家族の人数が多かったり小さい子供やペットがいて普段の電気使用量が多めの世帯におすすめのタイプです。
- 特定負荷型
一部の負荷設備のみを賄うことができる蓄電池です。
災害時に利用できる家電や電気機器が少ないので、停電時でも利用範囲が限られます。特定負荷型の蓄電池は、世帯人数が少ない家庭におすすめのタイプです。また、停電時に使える利用範囲が少ない点を抑えておきましょう。
停電時以外でも便利な蓄電池のメリット
では、停電時以外でも得られる蓄電池のメリットについても確認しておきましょう。
太陽光発電の導入効果を最大限に活かすには、停電時でなくても蓄電池を設置しておいた方がおすすめです。
- 電気料金が節約できる
- 電気代高騰の影響を受けない
- ピークシフトに貢献できる
- 電気自動車と連携できる
- FIT制度の終了後に自家消費できる
- 天候に左右されなくなる
- 環境にやさしい生活ができる
- パワコン一体型蓄電池が利用できる
電気料金が節約できる
太陽光発電と蓄電池の併用、そして電気会社の割安深夜プランを契約すれば、電気代の節約に繋がります。
深夜プランで割安となった電気を蓄電池に貯めておいて、料金が高くなる昼間に使用すれば電気代の節約になります。
電気代高騰の影響を受けない
電気代が年々値上がりして来ていますが、太陽光発電と蓄電池を利用すれば、値上がりの問題から回避することができるようになります。
蓄電池を設置して電力会社の電気をできるだけ減らすと、電気代の値上がり対策になります。各家庭でできる節約方法として、太陽光発電と蓄電池の併用がおすすめです。
ピークシフトに貢献できる
蓄電池を設置して電気を使用する時間帯をシフトすれば、電力需要のピークを減らすことができて、しかも通常使っている電気量は変えずに電気料金を下げることが可能になります。
電気自動車と連携できる
「トライブリッド蓄電システム」を利用すると、電気自動車も自家消費で電気を賄うことができるようになります。
昼間に太陽光発電の電気を蓄電池に貯めておいて、夜間に電気自動車へ充電すれば、次の日には電気自動車を利用することができるようになります。
FIT制度の終了後に自家消費できる
FIT(固定価格買取制度)が終了しても自家消費型にシフトして蓄電池で電気を賄うことができます。
売電収入よりも電力会社からの購入する電気を少なくしたほうが結果的には経済的メリットを得ることができます。
天候に左右されなくなる
蓄電池に電気を貯めておけるので、天候が悪い日でも太陽光発電の電気を使うことができます。
天気が悪い日が続いても蓄電池があれば、安心して太陽光発電をうまく利用することができます。
環境にやさしい生活ができる
太陽光発電で作った電気を蓄電池に貯めて利用すれば、電気の無駄遣いを避けて節電効果に繋がります。
再生可能なエネルギーを効果的に活用し地球温暖化などの環境問題対策に貢献することができます。
パワコン一体型蓄電池が利用できる
パワーコンディショナーと買い替えのタイミングに合わせて、パワコン一体型蓄電池( ハイブリッド型蓄電池)を導入すれば、変換効率が良く発電効果が期待できます。
一般的にパワーコンディショナーの寿命は10〜15年程度で、いずれは修理や交換が必要な時期が来ます。
太陽光発電を設置してから10年経過している場合や、蓄電池の導入を検討されている場合は、パワコン一体型蓄電池で検討するのも良いでしょう。
まとめ
太陽光発電は停電時にも使えるため、災害対策に備えるシステムとしておすすめです。
太陽光発電の使い方については「自立運転機能」の切り替え方法や、停電時に使える家電の種類などについて事前に確認しておきましょう。
また、太陽光発電を効率良く使うために蓄電池のメリットを知って導入を検討すると良いでしょう。