太陽光発電システムを導入する際は、健康への影響などについて事前に正しく理解しておくことをおすすめします。
太陽光発電は、太陽エネルギーから電気をつくるシステムであるため、一部では電磁波による健康被害があるのではないか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
そこで、本記事では、太陽光発電で電磁波の影響があるのか?電磁波の正しい知識を解説していきます。
太陽光発電で電磁波が発生するのはパワコンのみ!
結論から言いますと、太陽光発電システムから電磁波は発生していますが、健康被害については、普段使っている家電製品と同じように特に気にする必要はありません。
また、電磁波が発生するのは、パワーコンディショナーのみで、太陽光パネルでは電磁波は発生しません。
では、もう少し詳しく解説していきます。
電磁波について
まずは、電磁波について簡単に説明していきます。
電磁波とは、電力設備や家電製品のまわり等、電流の流れるところに発生するエネルギーの波です。電磁波は「電界」と「磁界」が交互に発生しながら波のように伝わっていきます。
電磁波は「電界」または「磁界」のみの作用では発生せず、「電界」と「磁界」両方が存在する場合に発生する仕組みとなっています。
- 電界:電圧がかかっている物の周りに発生します。例えば、コンセントを差すと、電線に電圧がかかり「電界」が発生します。
電界による身近な現象として、静電気や雷が挙げられます。
- 磁界:磁石や電流が流れている周りに発生します。例えば、スイッチを入れると、電線には電流が流れて「磁界」も発生します。
磁界による身近な現象については、磁石(N極とS極)の力が挙げられます。
太陽光発電から電磁波が発生するしくみ
わたしたちが、使っている家電製品の電気は「交流電力」です。
一方、太陽光パネルで発電する電気は「直流電力」であるため、そのままでは使うことができません。
そこで、パワーコンディショナーを設置して「直流電力」を「交流電力」に変換して家庭内で電気を使えるようにします。
太陽光発電システムを使う場合は、パワーコンディショナーを経由して電気を作る際に、微量ながら電磁波が発生するようになります。
太陽光発電のどこに発生してどこに発生しないのか
電磁波が発生するのは、「電界」と「磁界」両方が存在する場合で、太陽光発電システムの中で パワーコンディショナーのみになります。
なお、太陽光パネルから得られる電力は「直流電力」なので、電磁波は発生しません。
また、直流電力をパワーコンディショナーに送るための「接続箱」でも、電磁波は発生しません。
- 太陽光パネル:電磁波は発生しない
- 接続箱:電磁波は発生しない
- パワーコンディショナー:電磁波は発生する
太陽光発電で発生する電磁波の強さはどの程度なのか
では、パワーコンディショナーの電磁波の強さについて確認しておきましょう。
WHO(世界保健機関)による、電磁波の健康への影響に関する国際的なガイドラインでは、以下の値が記されています。
- 最新の科学的知見に基づき、ふだんの生活のなかで浴びる磁界のガイドライン値を200マイクロテスラ(50ヘルツ、60ヘルツの商用周波数)とする。
住宅用太陽光発電のパワーコンディショナーから発生する電磁波は4.26マイクロテスラです。
大型の産業用のパワーコンディショナーの電磁波でも11.9マイクロテスラです。
ガイドラインの数値(200マイクロテスラ)と比べてもわかるように、健康に影響する心配はないと考えてよいでしょう。
また、パワーコンディショナーから発生する電磁波と、普段使っている家電製品の電磁波を比較すると、普段、電磁波を気にしないで使っている家電製品の方が数値が高いものもあります。
以下は、「電磁界情報センター」による家電製品から発生する磁界の測定数値となります。
ご覧の通り、電動歯ブラシ、電気カーペット、温水洗浄便座などは、パワーコンディショナーよりも強い電磁波を発生していることがわかります。
家電製品 | 最大値:マイクロテスラ | 測定距離 |
電動歯ブラシ | ~38 | 0㎝ |
電気カーペット | ~12 | 0㎝ |
温水洗浄便座 | ~12 | 0㎝ |
掃除機 | ~3.2 | 0㎝ |
電気毛布 | ~3.2 | 0㎝ |
電子レンジ | ~2.2 | 30㎝ |
ヘアドライヤー | ~1.6 | 10㎝ |
洗濯機 | ~1.2 | 30㎝ |
ノートPC | ~0.2 | 0㎝ |
冷蔵庫 | ~0.1 | 30㎝ |
太陽光発電による電磁波の人体への影響
以上のように、国際的なガイドラインの数値から見ても、太陽光発電システムによる電磁波については、健康に影響がないことが公的な見解となっています。
しかし、一部の消費者や太陽光発電を設置した場所の近隣住民の中には、太陽光発電システムの電磁波で体調不良になったというクレームが発生した事例もあります。
電磁波によるクレームは、太陽光発電の設置に対してあまり好意的ではない場合に起こりやすくなっています。被害者側の主観的な主張によって、健康被害と太陽光発電を関連付けて近隣トラブルになってしまうケースがあります。
近隣トラブルによる対処法としては、公的機関による太陽光発電の電磁波の見解をしっかり理解して、正しい知識を前提に話し合う必要があります。
太陽光発電の健康リスクについて
太陽光発電による電磁波の人体への影響については、「WHO(世界保健機関)の健康リスク評価」で、以下の内容が公表されています。
短期的な影響について
- 高レベルの磁界を浴びると、神経・筋肉への刺激等の生物学的影響が生じる(科学的に解明済みである)
- 国際的なガイドライン(ICNIRP等)を守っていれば悪影響はない。
長期的な影響について
- 小児白血病に関する証拠は、因果関係と見なせるほど強いものではない(疫学的には弱い関連性が認められるものの、生物物理学的証拠は認められていない)。
- 小児白血病以外の病気に関する証拠は、小児白血病についての証拠よりもさらに弱いか、因果関係がないことを示唆している。
電磁過敏症について
- 電磁波の影響で頭痛やめまいなどが起こると訴える、いわゆる「電磁過敏症」の症状については、電磁波が関連するという科学的根拠はない。
太陽光パネルは発がん性があるのかどうか
太陽光パネルには、鉛、セレン、カドミウムなど、その他、有害物質が含まれています。
したがって、将来的に太陽光発電システムを廃棄処分する際に、取り扱いを怠ると有害物質が流出し人体に悪影響を及ぼす場合もあります。
太陽光パネルに含まれる有害物質
以下は、太陽光パネルに含まれている有害物質の種類です。健康上で影響のある症状などをまとめておきます。
パワーコンディショナーで発生する電磁波の対策
今まで説明した通り、基本的には、太陽光発電の電磁波による健康への悪影響はないと考えてよいでしょう。
それでも、万が一の場合に備えて、電磁波の対策を考えていきたい方は、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
- パワーコンディショナーの設置場所を屋外型にする。
- パワーコンディショナーは近隣住宅から距離を取って設置する。
- パワーコンディショナーを購入する前に専門家に相談する。
パワーコンディショナーの設置場所を屋外型にする
パワーコンディショナーは屋内型と屋外型がありますが、電磁波が気になる方は、屋外型を設置すると良いでしょう。
屋外に設置すれば、電磁波から距離が遠くなるため、被害を防止することができます。
屋外型のパワーコンディショナーの特徴は、設置場所を確保しやすいメリットがある一方、外部環境にさらされるため故障しやすいデメリットがあります。
したがって、修理、交換などに対応してもらえるか?メーカーの保証内容をしっかり確認しておくことをおすすめします。
また、価格については、屋内型よりも屋外型の方が、やや高めになっています。
パワーコンディショナーは近隣住宅から距離を取って設置する
パワーコンディショナーは、屋内型よりも屋外型の方が電磁波の影響が少なく、さらに、屋外でも近隣住宅から距離を取った場所に設置した方がトラブルになりにくくなるでしょう。
パワーコンディショナーと近隣住宅との距離は、できるだけ遠ざけることをおすすめします。
また、パワーコンディショナーは発電し始めると、モスキート音といって17000ヘルツ前後の高周波数の音が発生します。
このモスキート音によって頭痛が起こるなどで近隣トラブルになったケースもあり、パワーコンディショナーの音についても近隣住民への配慮が必要となるでしょう。
パワーコンディショナーを購入する前に専門家に相談する
パワーコンディショナーの電磁波について、基礎知識を得てから、実際に製品を選ぶ際は、専門知識のあるプロに相談して説明を受けると良いでしょう。
理解しやすい説明で納得できれば、安心して製品を選ぶことができます。
太陽光発電システムの取り扱い注意点について
パワーコンディショナーの電磁波対策の他にも、太陽光発電システムを導入する際の注意点についていくつか確認しておきましょう。
- メンテナンスを定期的に行う
- 台風や豪雨での対応について考えておく
- 利用後に不法投棄や放置をしない
メンテナンスを定期的に行う
太陽光パネルの破損によって、有害物質が流出する可能性もあります。
そのため、日頃からメンテナンスを心がけておけば、早めに故障が発見できて被害を未然に防ぐこともできます。
太陽光パネルは屋根上に設置するので、自然災害によって落下や飛来するケースもあります。
危険防止のためにパネルがしっかり金具で固定されているか?ねじのゆるみで落下の恐れはないかチェックするようにしましょう。
また、太陽光パネルの故障を防ぐためにも、製品の選び方や工事業者の選択もよく考えて決めるようにしましょう。
また、設備機器の修理や交換が必要となった場合は、メーカー保証の範囲であれば、無償で対応してもらえますので、保証内容については事前に確認するようにしましょう。
台風や豪雨での対策を考える
浸水した太陽光発電設備に近づくと感電する恐れがあります。大型の発電所の周りに関係者以外の侵入を防ぐ対策が必要です。
FIT 制度では、認定事業者に対して、太陽光発電所周辺に標識、柵フェンス等の設置が義務付けられています。地域と共生した事業を実施するには、ルールを守って運用することが重要です。
なお、フェンスの設置が困難な場合や第三者が発電設備に容易に近づくことができない場合、河川や崖に面した場所に設置する場合等には、フェンス設置は不要です。
また、自然災害のリスク回避のためには、火災保険や動産総合保険へ加入も検討することをおすすめします。
利用後に不法投棄や放置をしない
太陽光パネルの寿命は、適切な維持管理によって長く利用できる設備ですが、利用状況や設置環境など、さまざまな理由によって廃棄処分するタイミングもでてくるでしょう。
太陽光発電を導入している方は、将来的に廃棄処分する方法についても今から知っておくことをおすすめします。
太陽光パネルには、有害物質を含んでいますので一般ゴミとは異なり、産業廃棄物扱いで処分する必要があります。太陽光パネルを廃棄する場合は、専門業者に依頼しましょう。
専門外のゴミ処理業者に依頼した場合は、違法となりますので注意が必要です。また、自分で撤去して処分しようとした場合は、以下の危険性を伴いますので控えましょう。
まとめ
太陽光発電システムの電磁波の影響については、パワーコンディショナーから発生しますが、数値的には微量で人体に影響する問題はありません。
それでも、気になる方は、パワーコンディショナーを屋外に設置して、なるべく近隣住宅から距離を取って設置した方が良いでしょう。
また、太陽光発電システムを導入する際は、電磁波以外にも危険伴う問題や近隣トラブルにならないように、メーカーの保証内容について事前に確認し、導入後は定期的にメンテナンスを行うようにおすすめします。