自転車を雨ざらしにしておくのは心配で「駐輪スペースに、サイクルポートを設置することはできないか?」と考えている人も多いと思います。
しかし、実際に設置の計画を始めてみると
- 建物全体の面積が変わるので建築基準法違反になってしまうのではないか
- 建物を建てる際に必要な確認申請が必要なのではないか
といった法規制に関する心配事や
- サイクルポートの耐風、耐雪強度はどのくらいなのか
- サイクルポートと検索すると、たくさんの商品がでてくるけれど、どのメーカーのものを選べばいいのか
など、様々な心配事が出てきます。
今回は、サイクルポートを設置する場合の注意点と、各メーカーの特徴をご説明します。きちんと理解した上で、サイクルポートの設置を考えていきましょう。
駐輪場に屋根を付ける為の確認申請ってなに?
まず、法規制に関する部分からみていきましょう。
確認申請が必要なのは建物を建てる前
建物を建てるには「土地を決め、建物のデザインを決め、いよいよ工事」という流れになりますが、敷地内であれば好き勝手に建物を計画できるわけではありません。
それぞれの土地には、建てる建物の用途や高さの制限などが地域ごとに細かく定められていて、その制限をクリアしていきながら建物の設計を進めていきます。
しかし、きちんとその制限をクリアした建物の設計を終えたからといって、「よし、建てよう!」といってすぐに工事に入れるわけではありません。
建物を建てるためには、着工前に計画している建物がきちんと制限通りになっているか、審査を受ける必要があります。
それが「確認申請」です。確認申請が終了し、「確認済証」というものが役所または審査機関から発行されなければ、工事を始めることはできません。
また、工事終了時には「完了検査」というものが必要です。これは、「確認申請」の際に提出をして許可を受けた計画通りに建物が完成したかどうかの検査になります。
建物の規模によっては、工事途中に「中間検査」をする場合もあります。「完了検査」に合格して「検査済証」が発行されて初めて、その建物を使用することができるようになります。
建て始める前の「確認申請」で審査されるのは、主に建物の面積や仕様になります。
サイクルポートは、特にこの審査項目である面積に関係してきます。
サイクルポートは面積に算入する?
建物でいう面積というのは、「建築面積」と「延べ床面積」に分けられます。
「建築面積」は、「建ぺい率」を算出するのに用いられ、「延べ床面積」は「容積率」を算出するのに用いられます。
「建ぺい率」とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことで、「容積率」とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合のことです。
それぞれ、算入する規定が異なるので、別々に算出しなければなりません。
サイクルポートは建築面積に含まなくて良い場合もある
まず、「建築面積」からみてみましょう。建築面積は、「建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。」と定められています。
簡単に言うと、「建物を真上から見た時の面積」のことです。柱や外壁がある部分は面積に算入されます。
サイクルポートのように、駐輪場に屋根を取り付けるためにはそれを支える柱が必要になるので、サイクルポート部分も建築面積に算入されることになります。
建築面積が大きくなれば、建蔽率が大きくなってしまうので、制限オーバーになってしまい住宅部分の面積を削らなければならない可能性も出てきます。
しかし、サイクルポートなど「国土大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離一メートル以内の部分の水平投影面積は当該建築物の建築面積に算入しない」という緩和措置を適応できる場合があります。
その条件は、
- 外壁のない部分が連続して4m以上
- 柱の間隔が2m以上
- 天井の高さが2.1m以上
- 地階を除く階数が1
になります。これらの条件を満たせば、サイクルポートを設置しても端から1m以内の部分は建築面積に算入する必要はありません。
このような緩和措置がありますが、地域によって面積算入に関する考え方が異なる場合があるので、その場合にはその地域の規制に則って計画をしましょう。
一般的なサイクルポートなら延べ床面積に参入しない
次に、「延べ床面積」をみてみましょう。
「延べ床面積」とは、「建築物の各階の床面積の合計による。」と定められています。
この「延べ床面積」にもさまざまな緩和があり、算入しなくて良いとされている部分がいくつかあります。
サイクルポートに関して言うと、「自動車車庫その他専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設の用途に供する部分」は、建築物の延べ床面積の5分の1を限度として延べ床面積に算入しないとなっています。
つまり、サイクルポート部分の床面積も含めた全体の延べ床面積の5分の1よりも、サイクルポート部分の床面積が小さければ、延床面積に算入しなくていいということになります。
戸建住宅にサイクルポートを設置する場合、その部分の面積が全体の5分の1の面積を超えることはあまりありません。
一般的な大きさのサイクルポートであれば、そこまで延べ床面積の心配をする必要はないでしょう。
しかし、建築面積同様、延べ床面積についても地域によって考え方が異なるので、事前の確認をしておきましょう。
確認申請をしていれば建築基準法違反にはならない
面積の上限をオーバーせず、確認申請時にきちんと申請していれば、サイクルポートを設置しても建築基準法違反になることはありません。
また、住み始めてしばらく経ってからサイクルポートを追加する場合でも、改めて申請をすれば問題にはなりません。しかし、実際には申請をせずに設置をしてしまう方が多くいます。
そうすると、万が一役所からの指摘があり、せっかく取り付けたサイクルポートを撤去しなければならない可能性もあります。
サイクルポートを設置する前に、設計を依頼した設計事務所などに相談をしてみるといいでしょう。
サイクルポートおすすめのメーカー・価格
「サイクルポート」と検索すると、たくさんの商品がでてきます。
商品ごとに様々な特徴があり、すべてを比較するのには大変な労力がかかります。
ここで、おすすめのメーカーとその価格帯についてご紹介します。
(LIXIL)カーポートSCミニ
参照元:LIXIL | カースペース | カーポート SC | バリエーション | ミニ
このサイクルポートの特徴は、なんといってもこのデザインです。
他社のサイクルポートでは、主に半透明のポリカーボネート板の屋根が用いられていますが、屋根材にもアルミを使用し、スタイリッシュなデザインの外観になっています。
柱と屋根材の色をそれぞれ選択可能なので、様々な組み合わせがあり、家の雰囲気に合わせることができます。
サイズ展開は、幅はすべて同じで2.1m、長さ・高さは3種類ずつあります。また、縦に2連続で設置することも可能で、最大で約10mの長さにすることもできます。
柱は片側だけですが、しっかりとした強度があり、風速42m/秒、積雪20cm程度まで耐えられます。
ちなみに、風速42m/秒とは、どの程度の強風なのかというと、屋外での行動は極めて危険で、走行中のトラックが横転するほどの強風になります。
本体価格は、295,000円~となっています。オプションも豊富で、防犯カメラやサイクルキーパー、照明などがあります。
特に照明の種類は豊富で、ダウンライト、ダウンスポットライト、スポットライト、エスコートスポットライトの4種類から選べます。さらに照明には人感センサー付きのものも選択できます。
(YKK AP)エフルージュシリーズ サイクルポート
参照元:サイクルポート|エフルージュ シリーズ | YKK AP株式会社
カーポートやサイクルポートの屋根材に多いポリカーボネート板を使用した商品です。
ストレートな屋根形状で、よりすっきりとしたデザインになっています。
風速は38m/秒、積雪は20cmまで耐えることができます。風速38m/秒も、非常に強い風で、屋外で活動するのは極めて危険な速度になります。
屋根材のポリカーボネート板は、通常ポリカーボネート板と熱線遮断ポリカーボネート板の2種類から選ぶことができます。熱線遮断ポリカーボネート板は、名前の通り熱線を遮断してくれるので、屋根の真下の気温上昇を防いでくれます。
屋根材の色は、ポリカーボネート板は3種類、熱線遮断ポリカーボネート板は2種類から選べます。柱などの本体色は4種類から選べます。
この商品も、サイズ展開は長さ3種類・高さ2種類から選択できます。その他、2連やY合掌など、複数のサイクルポートを合わせて使用することも可能です。
本体価格は、基本セットが179,500円~となっています。
オプション品には、車止めバーやサイドパネル、物干しがあります。サイドパネルは、横からの雨の侵入を防ぐのに役立ちます。
(三協アルミ)サイクルポート カムフィーエース
本体価格が135,200円~と、他社製品と比較すると安価ですが、しっかりとした強度があり、風速38m/秒、積雪20cmまで耐えられます。
オプションで、耐風圧強度を46m/秒まで上げることができます。
サイズ展開が非常に豊富で、設置場所に合わせてサイズを選択できます。屋根材は、ポリカーボネート板、熱線遮断ポリカーボネート板、アルミ板から選択できます。
オプション品には、照明や車止めバーの他に物干しや外部コンセント、さらには専用の掃除道具もあります。
おすすめのサイクルポートをご紹介しました。
紹介した商品の価格は、本体価格ですので、ここに施工費がプラスされます。
施工費については、施工店や施工時期よって価格差があります。また、施工店は慎重に選びましょう。
メーカーが指定する施工方法を取らずに設置をし、倒壊などがあった場合、メーカーからの保証が受けられなくなります。
安さだけでなく、きちんと施工をしてくれる業者にお願いしましょう。
駐輪場の屋根は長持ちさせたい!台風・雪への対策
せっかく設置したサイクルポートですから、できるだけ長く使い続けたいですよね。
各メーカーが耐用年数を載せてはいますが、これはあくまで目安であり、使用方法によっては短期間で使用できなくなってしまう場合があります。
できる限り長く使用するには、きちんと施工してもらうのはもちろんのこと、日々のメンテナンスが重要です。
メンテナンスと言っても、特別なことはしなくても大丈夫です。屋根に溜まった落ち葉などを取り除くなど、簡単なことを欠かさずやり続けることが重要です。
日々のメンテナンスを怠ることなく続けていても、台風や雪による自然災害は避けられません。
そのため、サイクルポートの選定の際に耐風・耐雪についてよく確認をしましょう。
選定ポイント「耐風」
まず、耐風についてです。メーカーのカタログなどに、耐風圧が記載されています。
よく見かける数字は風速38~42m/秒だと思います。先ほども少し触れましたが、35m/秒以上の風速になると、自動車などが横転するほどの強風になります。
40m/秒ともなると、外で立っているのもままなりません。事前に商品の耐風圧を確認しておきましょう。
商品自体の耐風圧も大切ですが、設置場所にも注意しましょう。
風の吹き溜まりになってしまう場所だと、周囲よりもより強い風が起こる可能性もあります。
また、サイクルポートにはサポート柱という緊急時に取り付けできるオプション品もあります。こうしたものを活用するのもいいでしょう。
選定ポイント「耐雪」
次に、積雪についてです。こちらもメーカーのカタログなどに耐雪量が記載されています。
お住まいの地域がどの程度の積雪量になるのか、事前に確認をしたうえで商品を選定しましょう。
目安としては、北海道や東北の日本海側などの豪雪地帯は100cm以上、日本海側を除く東北では50cm、それ以外の地域は20cmとなっています。
特に、東北など雪が毎年必ず積もる地域は商品を慎重に選びましょう。
また、雪が降る時期には家屋の雪下ろしと一緒にサイクルポートの雪下ろしもこまめにしておきましょう。
先ほどご紹介したサポート柱を補助として利用するのもいいでしょう。
まとめ
いかがでしたか。大切な自転車が雨ざらしになってしまい、さび付いてしまったりするのを防ぐには、サイクルポートなどの屋根を設置してあげると良いでしょう。
サイクルポートを設置したいと考えた時には、まず面積算入について検討しましょう。各地域によって、算入・不算入の基準が異なるので、建築士など専門家に相談をしましょう。
次に、商品の選定です。商品によってデザインも価格も大きく異なります。価格は、施工費も含めた金額を確認しましょう。
また、耐風圧・耐雪量もきちんと確認し、お住まいの地域に合ったものを選びましょう。安心して駐輪をして使用できる空間を作っていきましょう。