太陽光発電を導入する際に気になるのが「影」の影響ですね。
ご自宅の近くに大きなビルや樹木があっても大丈夫なのか?南側に建物があっても問題ないのか?いろいろと疑問になるかと思います。
そこで、本記事では、太陽光発電に影響する「影」についてと、その解決策、発電量に関わる要因などを解説していきます。
影による太陽光発電への影響
「影」は太陽光発電の発電量にどう影響するのか?、太陽光パネルのしくみを踏まえて解説します。
また、複数の「セル」が組み合わさった太陽光パネルを、配線で直列に組み合わせた単位を「ストリング」と言います。
太陽光パネルで作られた電気は、「ストリング」を介してパワーコンディショナに入力され、家庭内で電気が使えるようになります。
このように、太陽光パネルにできた「影」によって、パネル1枚の発電効率を下げてしまうと 「ストリング」で共有している部分まで影響を及ぼしてしまうため、太陽光パネルの一部分が「影」になっただけでも、全体的に発電効率を低下させてしまうことになります。
したがって、太陽光パネルが何らかの障害物によってわずかでも「影」になってしまう場合は、「影」にならないような方法を考える必要があります。
太陽光パネルが「影」になる要因
では、まずは太陽光発電が「影」になる要因について、おもに以下の2つのポイントに分けて確認していきましょう。
- 天候による影の影響について
- 近隣の障害物による影の影響について
天候による影の影響について
太陽光発電の発電量に影響する要素は、毎日の天気です。
天気による発電量の割合は、晴天の日の発電量を100%とした場合、曇天の日の発電量は、約40〜60%程度で、雨天の日の発電量は、約20%程度まで下がります。
曇りや雨の日は、太陽光パネルに日差しが当たらなくなるので、晴天時の「影」と同じように発電効果が低下します。
ただし、曇りや雨の日だからと言って発電量が全くなくなるという訳でもありません。
晴天の日に比べると発電量は低下しますが、最も関係する要素は「日射量」と「日照時間」になります。
例えば、6〜7月の梅雨シーズンは、雨と曇りの日が多くなりますが、冬に比べると日照時間が長くなる分、日射量が増える傾向にあります。
また、7月〜9月の夏の時期は、高温の日が続くため、太陽光パネルの温度が25℃より高くなると発電量は低下します。
さらに、地域性によっても、太陽光発電の発電量が変動する傾向にあります。
雨の多い太平洋側よりも、内陸の方が日射量が多く発電量は増える傾向にあり、南本州の地域の方が気温が高く、日射量が多いので太陽光発電に向いている地域とも言えます。
他に、時間帯による発電量の変動については、晴天の正午をピークに、左右対称の山を描くように発電量は変動する傾向にあります。
日照時間の長い夏は冬よりも発電効率が高くなり、日照時間は夏は長く冬は短くなります。
このように、太陽光発電の発電量は、さまざまな環境の条件によって異なるため、雨や曇りでもどれくらい発電量を得ることができるか?また、年間の発電量はどれくらいか?設置するご自宅の環境に合わせて、導入前にシュミレーションしておくことをおすすめします。
「日射量」の目安については、天候や季節、空の晴れ具合、雲の様子、時間帯等の要素を踏まえて、以下にまとめておきます。
太陽光発電の「発電量」と「日照時間」の関係については、以下のポイントを抑えておきましょう。
近隣の障害物による影の影響について
太陽光発電を設置する際に、自宅周辺に障害物がある場合は、「日射量」と「日照時間」に大きく影響します。
近隣の障害物による「影」の影響がある場合は、以下のポイントを見直しましょう。
- 障害物の方角や高さを見直す
- 太陽光パネルの傾斜を見直す
- 建設ビル計画の予定を確認する
障害物の方角や高さを見直す
太陽光発電の発電量に影響する障害物は、建物、電信柱、樹木、アンテナなどがあげられます。
これらの障害物によってできる影については、たとえ小さいものでも見落とさずに、一日の太陽の動きを見て、方角や傾斜についてしっかりチェックしておきましょう。
例えば、電柱の上に設置したあるトランス(柱上変圧器)によって「影」になるといったケースもあります。
他には、住宅が平屋の場合、周辺環境によって「影」になりやすいため、太陽光パネルの位置や傾斜などを見直して太陽の当たりやすい場所を設定する必要があります。
また、「日射量」と「日照時間」は夏と冬では異なりますので、「影」になる部分については、細かく確認しておく必要があります。
加えて、樹木については、冬よりも夏の方が葉っぱが生い茂って「影」が大きくなるため、季節ごとの影響も考えて状況を見直しておきましょう。
太陽光パネルの傾斜を見直す
障害物によって太陽光パネルが「影」となる場合は、パネルの下に架台を設けて傾斜を変えることで問題が解決するケースもあります。
太陽光パネルに取り付ける架台とは、太陽光パネルを設置する土台で、発電効率を上げるために役立つ設備です。
屋根の形状や傾斜が適切でない場合に、架台を設けて日射量を調節することが可能です。
ただし、架台に設けた太陽光パネルを複数、重ねて設置した場合、重ねる間隔を詰めすぎて「影」の部分を増やしてしまう場合もあります。
したがって、架台を設置する際は、最適な角度や方角を計算してから工事を行うため、施工業者を通して必ず着工前に確認しておくようにしましょう。
なお、一般的に、太陽光パネルの傾斜は20〜30度が理想的で、方角は南向きがベストです。
もし南向きが確保できない場合は、東西に向けてなるべく発電量が得やすい位置に設置すると良いでしょう。
また、北向きの方角は、発電効率が悪く、設置後に近隣住宅に反射トラブルが起きやすいためおすすめしません。
建設ビル計画の予定を確認する
もう一つ確認しておきたいのは、現況では周りの障害物が無くても、将来的にマンションが建つ予定がある地域の場合は、事前に建設予定を確認しておきましょう。
太陽光発電を設置した後に、近隣にマンションが建設されたことで日照が得られなくなった事例もあります。
売電収入などで費用回収を計画していた場合には、計画通りにはいかなくなり、自家消費するにも、発電効率が悪ければ期待通りに電気を使うこともできなくなります。
一般的な日照権のトラブルについては、法令上で日照阻害の程度が受忍限度を超えると認められた場合は、業者が損害賠償の責任を負うことになります。
一方、太陽光パネルの日照権については法令上で規制がないため、諸事情を総合的に考えて違法性があるかどうかを判断することになります。
違法性を判断する要素については、地域性、太陽光発電設備の稼働効率の低下の割合、’設備の設置位置、マンションが回避できる可能性など他、多角的な面から判断されます。
建設予定のマンション等による日照権については、後からトラブルとならないように気を付けましょう。
影の影響を最小限にする解決策
太陽光発電の発電量に影響する「影」を最小限にするためには、以下の2つについて確認しておきましょう。
- バイパスダイオードについて
- オプティマイザーについて
バイパスダイオードについて
太陽光発電は、「影」やその他、発電量を低下させる要因によって導入効果が得られなくなる場合もあります。
その解決策の一つとして、太陽光パネルに関わる機能「バイパスダイオード」があります。
- バイパスダイオード
太陽光パネルの電力損失の低下を防ぐために、有効的な機能です。「日射量」と「日照時間」による発電量の変動に対して、日常的に想定できるデメリットな要素をバイパスダイオードによって解決することが可能です。
「バイパスダイオード」のしくみは、直列に接続されたセルの中で、不具合の起きたセルを迂回して電流を流すことでセルの不具合が、太陽光パネル全体に及ぶのを防止できるようになっています。
オプティマイザーについて
太陽光発電を利用する際は、売電収入や電気代の節約に関わる発電効率を上げる方法が大きなポイントです。「オプティマイザー」は、太陽光発電に後付けで取り付けられる、発電量を向上させる装置です。
- オプティマイザー
太陽光パネルを最適化する電圧装置です。太陽光発電の「影」による発電効率の低下を防ぐために有効利用できます。
「オプティマイザー」のしくみは、太陽光パネル1枚ごとの能力を上げて、電流の大小に対して電圧を調整し、自動で制御することができます。自家消費型で利用したい場合に、太陽光発電+オプティマイザーの設置は有効的です。
太陽光パネルの影に影響する発電量の 計算
太陽光発電の「影」によるデメリットを知るために、導入する前にシュミレーションを行いましょう。
太陽光発電の発電量については、設置場所の日射量から計算して数値を出すことができます。
- 発電量の計算式= システム容量 × 日射量(kWh))× 0.85
発電量は、設置する地域によって異なるため、自宅の場合に合わせてより正確な数値を出すようにしましょう。
太陽光発電の発電量に関わるその他の要因
太陽光発電を導入する際は、「影」の影響以外にも、発電量に関わる要因について確認しておきましょう。
- 太陽光パネルの汚れ
- 経年劣化
- パワーコンディショナーの変換ロス
- 太陽光パネルの変換効率
- 気温の変化
- 積雪地域への設置
- 塩害地域への設置
太陽光パネルの汚れ
太陽光パネルに汚れがつくと、発電量の低下に繋がります。
鳥の糞や埃、落ちにくい汚れは、屋根上の掃除を定期的に行うことが必要です。ガラスの破損やパネル内部の劣化、雨水の浸水などにも要注意です。
太陽光発電は、住宅用の太陽光発電10kW未満の場合、メンテナンスが義務化となっています。
システムを導入した後、4年に1回のタイミングでメンテナンスを行うことが推奨されています。
経年劣化
太陽光パネルは、利用期間が長くなれば劣化して品質が低下します。
利用してから10年間で2.7%、20年間で5.4%、30年間で8.1%の発電量が低下すると言われています。
太陽光パネルメーカー各社には、出力保証が付いており、保証期間は20年〜25年が一般的です。
パワーコンディショナーについては、寿命がおよそ10年〜15年程度となっています。
太陽パネルの経年劣化に関わる要因については、設置した地域や天候、利用状況などによって消耗する年数が変わってきます。また、自然災害の多い地域では、もしもに備えて保険に加入することも検討しましょう。
パワーコンディショナーの変換ロス
パワーコンディショナ―は、太陽光発電で発電した電力を直流電気から家庭内で利用できる交流電気に交換する機器です。
パワーコンディショナーを通して家庭内で利用できる電気になるには変換ロスが生じます。
パワーコンディショナーの変換効率は、一般的にはだいたい95%以上となっています。
太陽光パネルの変換効率
太陽光発電の発電量は、太陽光パネルの変換効率によって変わってきます。
太陽光パネルの変換効率は、製品メーカーによって異なりますので、各社製品の仕様を確認して比較検討すると良いでしょう。
一般的な太陽光パネルの発電効率は「13〜20%」程度で、20%以上であれば高性能な製品であると言われています。
太陽発電システムを導入する際は、初期費用が高額になるため、できるだけ費用を抑えたいところですが、低コストで抑えようとすると発電効率の低い製品を選んでしまうケースもあります。
太陽光パネルの変換効率については、価格とのバランスを考えて検討することをおすすめします。
気温の変化
太陽光発電パネルの公称最大出力は、気温25度の環境で測定された数値になっています。
気温25度を1度超えると0.5%ほど発電量が低下すると言われています。
太陽光を利用したシステムなので、真夏の方が太陽の日差しが強くて発電効率が良いと思いがちですが、実は25度を超えてしまうと発電効果が低下し、損失係数も多くなる計算になります。
積雪地域への設置
雪が太陽光パネル表面に積もった場合、発電効率は低下します。
積雪被害を抑える方法としては、太陽光パネルの角度を15度にすることや、積雪耐性のある製品を選ぶ等の対策が必要です。
また、積雪地域に太陽光パネルを設置する際は、地元の地域性に特化した業者に依頼することをおすすめします。
塩害地域への設置
海近くに設置すると太陽光パネルがサビやすく発電効率が低下する傾向です。
メーカーによって設置不可になる場合や、または、塩害専用の太陽光パネルや架台などを設置するようになります。
塩害地域は海からの強風による影響も考えて、専用の施工方法や定期メンテナンスなども必要となります。
まとめ
太陽光発電を導入する際は、「影」の影響で発電効率を低下させないように、太陽光パネルのしくみや発電効率を低下させない方法を考えていきましょう。
また、設置する地域周辺に障害物がないか、また年間の「日射量」「日照時間」を調べて、システムを導入する前にしっかりシュミレーションしておくようにしましょう。